2007年06月30日

乳癌に対する漢方薬の考え方

おたより:内科医師

前略 いつも適切なご助言を頂きましてありがとうございます。
 先ずご報告から、
 最近になって感じたことですが、アトピーにおける清熱剤の選択についてです。白虎加人参湯を使用する機会が多かったのですが、ある症例から黄連解毒湯に変更し、猪苓湯とか茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)との合方で処方しましたところ(猪苓湯+茵蔯蒿湯+黄連解毒湯)、こちらの方が猪苓湯+茵蔯蒿湯+白虎加人参湯よりも効果が良好でした。
 以前このようなご指摘を頂いた記憶が蘇ってきましたが、あらためて確認するに至った次第です。

 今回は、乳がんの患者さんについてお教えいただけるとさいわいです。36歳の女性ですが、乳がん(浸潤性、リンパ節転移あり)の方で、幼少(1才と4歳)のお子さんをお持ちです。舌は淡紅で、体格は普通、胸脇苦満あり、腹直筋緊張あり、排便一日一回あるそうです。
 とりあえず、41と48を処方しましたが、村田さんの経験上何か示唆的なアドバイスがあればお願いいたします。


ヒゲジジイのお返事メール:アトピーに対する白虎加人参湯は、元近畿大学医学部教授の故遠田裕政先生の治験集などでは盛んに出てくるのですが、小生は白虎加人参湯証のアトピー患者さんに三十数年間、一度も遭遇したことがありません。

 今後、もしも遭遇することがあれば、使用する機会があるかと思いますが、舌先紅で黄苔がかった黄連解毒湯証にはしばしば遭遇して、現在も同方にインチンコウトウと六味丸の合方、あるいは知柏腎気丸製剤と猪苓湯の合方、あるいは補中益気丸(党参配合)と六味丸、あるいはインチンコウトウと黄連解毒湯のみの配合など、いずれも黄連解毒湯を主軸とした配合ばかりで、いずれも順調に寛解しつつありますが、いずれのケースでも白虎加人参湯の発想自体が浮かびません。

 温清飲・消風散も使用しませんし、十味敗毒湯などはもってのほかと考えているほどです。

 本題の乳癌の患者さんに関しましては、中医学的には乳房の疾患のひとつである訳ですから、疏肝解鬱作用のある薬物を主体に、例えば逍遙散や四逆散などを主軸として、適切な不正去邪の方剤を組み立てるのが一般的かと思います。(個人的な見解としては男性ホルモン様作用のある麝香を必ず加えます。)

 ご報告されておられますように、「胸脇苦満あり、腹直筋緊張」があるのであれば、なおさら柴胡・芍薬は必須であると思います。
現在投与されておられる(41)ツムラ補中益気湯には柴胡が少量含まれ、(48)ツムラ十全大補湯には芍薬も含まれますので、その点では必須薬物が配合されていることになりますが、配合分量的には明らかに柴胡の量が不足しています。

 また、医療用漢方では常識となっている(41)や(48)のような温補剤ばかりを重ねて投与されることについては、(あくまで個人的な見解ですが)些か疑義なしとしません。
 少なくとも扶正祛邪の観点から、もっと祛邪の薬物や方剤を併用しなければ、癌や悪性腫瘍に対抗することはやや困難なように思えます。

 但し、以前、先生が述べられましたように、抗癌剤や放射線を強力な去邪薬と考えれば、中医学的にも理に適ったものになるのかな〜〜〜と思っているところです。
 以上、忌憚のない個人的な見解を述べさせて頂きました。


折り返し頂いたメール: 例によって早速お返事くださいましてありがとうございます。
 村田さんのページにたどり着くまでに、温清飲・消風散・十味敗毒湯などを教科書にしたがって投薬していましたが、効果についてはパッとしなかったという印象です。

 本日も、つい最近に黄連解毒湯合猪苓湯合茵蔯蒿湯を処方したかた(児童)が再診されましたが、
「ほんとうによくなってびっくりしています。しかも、こんなに早く。唯一の難点はまずそうです。でも頑張って飲んでいますよ」
 と母親がびっくりなさっていました。

 以前、白虎加人参湯を処方していた方々も良好な効果が現れていましたが、合包の相手である猪苓湯合茵蔯蒿湯の効果による可能性があったかもしれないと愚考しています。
 いずれにしても、清熱剤は黄連解毒湯が中軸となる患者さんが多いかもしれません。村田さんの見識を確認する日々です。

 乳がんのアドバイスありがとうございます。おそらく、乳がんの担当医から、手術後の化学療法、ホルモン療法、分子標的療法などの治療の説明が成されるかすでに行われているかもしれません。おそらく、これらの治療が祛邪の薬物に相当すると思います。
 西洋医薬の副作用を軽減する作用および免疫系を賦活する効果を期待しつつ、柴胡・芍薬・麝香などを考慮して処方に活かしたいと思います。
 モヤモヤしていた頭の中が整理されてすっきりした感じです。
 いつもながらに参考となるご助言に深く感謝する次第です。

2007年06月29日

骨髄異形成症候群の漢方薬

 4月7日のブログ の中で取り上げた骨髄異形成症候群で速効を得ていた例
 運の良い人は、例えば骨髄異形成症候群という白血病の前駆症状であることが多い疾患でも、最初の二種類の漢方製剤によって30日後の検査で血小板が1,5倍、白血球は2倍に増えたお陰でこちらのほうはあっさり正常化して、主治医が怪訝な顔をされているが、いつまでこの効果が持続するかが今後の問題である。
 すでにご本人は治った気分でおられて服薬を怠り勝ちなのだから、素人さんの無知なるがゆえの恐さを感じるばかりである
の続報である。

 案の定、あれだけ口を酸っぱく根治する疾患ではないので、決して油断がならないことを説明しておいたのに、二ヵ月分の漢方薬で治った気持ちになって一ヶ月半ほど廃薬しておいたところ、赤血球を含めてあらゆる血液成分が低下して、久しぶりにやって来られた昨日は、息切れが激しく、相談室に直ぐに入れず待合の長椅子に腰掛けて、しばらく動けない状態である。

 ようやく相談室までの3mを歩いて腰掛けることが出来たが、付き添いの人とお二人に向かって思わず大声で、あれほど言っていたではないですか〜〜〜、病院で一切治療方法がなく、別に心不全をかかえるなどまたその他の問題もあって、輸血する訳にもゆかないと言われており、西洋医学的な対症療法すらまったく行ってもらえなければ、なおさら運よく速効を得た漢方薬類を決して途切らせてはならないと、あれほど言っておいたではないか〜〜〜と歯がゆいばかりである。

 こんなに酷い状態になって、何とかしてくれというのだからその一ヵ月半の漢方薬中断によって、もしかすると取り返しがつかないかもしれないのに・・・
 すでに前回の配合(加味帰脾湯+α)だけでは到底間に合わない状況だから、朝鮮人参が配合された牛黄製剤とヘム鉄入り液体を直ぐにその場で服用してもらう。

 その後数十分に渡る訓示?が終わって次の相談者と交替する時の足取りは、まったく正常に戻って息切れの痕跡すら無くなっているのにホッとする。

 順番を待っておられた常連さんには「いつになく大声で叱っているのを見てビックリしましたよ〜〜〜」とからかわれる始末。
 
 二ヶ月前の血液に戻ってくれれば良いのだか!?

posted by ヒゲジジイ at 13:28| 山口 ☁| 骨髄異形成症候群 | 更新情報をチェックする

2007年06月28日

昨日の続き:滲出液が多いアトピーに対する漢方薬の配合中に六味丸が必要となるのはなぜか?

性別 : 女性
年齢 : 40歳〜49歳
簡単なご住所 : 東海地方
具体的な御職業 : 同業(笑)の薬剤師
お問い合わせ内容 : 初めまして、実は先生の大ファンです。毎朝、先生のブログを見るのが、日課です。

 今日は宿題が出ていたので、恐る恐る挑戦しました。
 水疱が出ていると、どうしても祛湿剤や治風剤を使いたくなります。けれども、アトピーのような久病の患者さんで、ただでさえ肝腎不足の方に、これらの薬剤をしつこく使うと、乾燥が激しくなり、また掻きむしる・・・の繰り返しを起こしてしまいます。そこで、六味丸で滋補肝腎しつつ、利水清熱すると良いのではないでしょうか?

 また、ダラダラと汗を吹きだしてくるような方では、玉屏風散で衛表を強めて、邪気の侵入を防ぐ、陰液の漏れを防ぐとともに、肝腎陰虚になってしまっているので、六味丸を使うととても良いのでは・・・と思います。

 私は、水疱が出るということは、まだそこに炎症があり、瘀血(おけつ)があると考えています。そこでこのようなときに、白花蛇舌草、我朮、三稜、大青葉、スイカズラ・・・などもよく使います。このとき、黄精、玉竹、冬虫夏草、霊芝、田七なども一緒に補っています。

 乾癬で、ステロイドとチガソンを半年以上内服されていた方で、来られたときは、手足の裏に水疱がびっしりで、それが潰れて血が出て、杖をついて来られたのですが、水疱、乾燥、落屑、発疹の繰り返しが、2ヶ月半ほどでなくなりました。
 今は別人のように、普通のお肌で3年目を迎え、とても喜んでいますが、この時は毎週の調整に四苦八苦でした。
 外用は、紫雲膏の他に、モクタールを、プロペトとプラスチベースで薄めたものも使いました。

追伸: 一日1回クリックしています。機械オンチなので、よくわからないのですが、エンターを押して、画面が変わりますが、それで大丈夫ですか?


ヒゲジジイのお返事メール:大ファンなんて滅相もないことです。
 先生ご自身こそベテラン・名人の域に達しておられるように伺っています。一昨年頃、先生のサイトを訪問する機会があり、女性ながら凄い先生もおられるのだな〜〜〜と恐れをなしたことを覚えています(笑)
 また、このたびは貴重な御意見、ありがとうございます。

 ところで「宿題」の趣旨は、手の水疱の問題よりも、アトピー性皮膚炎患者さんにおいて濃汁が多量に流れる人や、全身から滲出液が多量に流れるタイプに、どうして六味丸が必須だったのだろうか?という問題を掲げたものです。

 しかしながら、水疱に関するご提案を種々賜り、興味深く拝読させて頂きました。
 やや気になる点は冬虫夏草など中医学ではれっきとした中草薬であるとはいえ、些か高価なものや煎じ薬でしか使用できない薬味類を多用?される方法論です。
 小生の拙い経験からは、殆んどのアトピー性皮膚炎は、煎じ薬や特殊な品を用いずとも、通常の方剤類の組み合わせで充分に解決できる疾患だと思っています。

 但し、かなり敏感でデリケートなアレルギー性疾患ですので、当方では祛風剤は銀翹散系列の方剤以外はほとんど使用せず、温清飲や消風散あるいは白虎加人参湯などは絶対に使用しません。(但し、温清飲加味方を用いて数十年来の乾癬患者さんに、顔以外の全身がゴワゴワの分厚いウロコ状になった超重症者に用いて8ヶ月で根治させた経験をもっています。8ヵ月で廃薬後もその後十数年以上、まったく再発なしという経験をどこかのブログにも書いた記憶があります。

 ところで、アトピー性皮膚炎自体が、ここ数十年の間に爆発的に増えた疾患であり、漢方薬による治療の歴史もそれほど長い訳ではありませんので、まだまだなかなかパターン化できない部分があるように思います。それだけ個体差が大きいように思います。

 また、個人的にいえば、中医学を齧りかけた当初は、日本漢方ではあまり用いられない中草薬類を好んで用いていたものですが、むしろしばらくして中医学で学んだ最大のことは、中草薬それぞれの薬性・薬能を深く知れば知るほど、それぞれの薬味の効能を有機的に利用可能であるから、多くの場合、日本漢方ではあまり用いられない薬味まで使用する必要はなく、薬性や薬能の類似した薬味で充分に代用が効くということでした。(製剤の場合は銀翹散製剤などの例外はありますが・・・)

 中医学理論はフル活用するものの、アトピー性皮膚炎レベルではそれほど特殊な薬味は殆んど必要としないことを長年の経験から感じているところです。

 ところで「宿題」の解答は、ほかでもない激しい津液の損耗から派生する腎陰虚が問題です。腎は主水の臓であり、この主水の臓である腎陰の虧損によって体内の水分調節機能が破綻を来たしているため、六味丸を必ず併用しないことには茵蔯蒿湯や玉屏風散あるいは猪苓湯などだけでは体液の漏出をコントロールできないからです。
 現実に六味丸を加えない時と加えた時の驚くほどの違いが生じた実例が沢山ありますので、人気投票のクリック数次第で公表を考えておきます(笑)

posted by ヒゲジジイ at 00:39| 山口 | アトピー性皮膚炎や慢性湿疹など痒みを伴う皮膚病 | 更新情報をチェックする

2007年06月27日

アトピー性皮膚炎に合併する手の水疱

 アトピー性皮膚炎にシバシバ合併する手の水疱。
 猛烈に?痒いらしいが、とりわけ梅雨時に悪化しやすい。
 下の写真は村田漢方堂薬局の漢方薬を服用しはじめて57日目。最初は両手に包帯をグルグル巻きにしても滲出液が滲み出るほど悲惨な状態だった。
 自費の村田漢方堂薬局の漢方を開始して膿汁が殆んど止まってきた頃の25日目が
http://murata-kanpo.seesaa.net/article/42812141.html
に掲載しているが、47日目の来局時には今回の写真よりもびっくりするほど、かなり綺麗になっていた。

 40日目?頃からはまったく包帯の必要はなくなり、水疱も2〜3個程度になっていたのだが、湿気の多い梅雨に入って、俄然、水疱が増えて、下記のように掻いたあとが赤く見える。
 全体的にはここまで改善したのだから、あとは水疱の除去である。

 なお、この方は結局、軟膏類の塗布を嫌い、下記の写真(すべて57日目の写真)にしても、一切、軟膏類を塗っていない。自然の状態である。 水疱を掻き毟った痕が散見される。
57n448i.jpg

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 村田漢方堂薬局に来られるまでは、クリニックの医師によるツムラ漢方で6ヶ月頑張っていたが、両手が腫れ上がり膿汁が流れ出てどうしようもない悲惨な状態になって来られたのだから、二ヶ月弱でもまずまずの経過である。

 今後の課題は、水疱の出没の解決であるが、もともとアトピー性皮膚炎に合併する手の水疱は、他の部位がほとんど治っても、最後まで残りやすいので、慎重に対処する必要がある。

 蛇足ながら、この方も、人気投票には意地でもクリックしてくれない。ヒゲジジイの回りは冷たい人ばかりである(笑)

 なお、いつもならバカ正直に現在の微妙な配合変化と今後の方針等を記すところだが・・・
 宿題:このような濃汁の分泌が激しかった人に配合処方中に六味丸が必須であったが、それはどうしてだろうか?
 同様に全身から薄い滲出液が大量に流れる別のアトピー性皮膚炎患者さんにも玉屏風散製剤とともに六味丸こそ必須であったがどうしてだろうか? 解答は今後の成り行き次第でハテナ?

posted by ヒゲジジイ at 00:17| 山口 🌁| アトピー性皮膚炎や慢性湿疹など痒みを伴う皮膚病 | 更新情報をチェックする

2007年06月26日

典型的な虚弱体質総合問屋さんの漢方薬の御相談

性別 : 女性
年齢 : 30歳〜39歳
簡単なご住所 : 中国・四国地方
具体的な御職業 : 非常勤教諭
お問い合わせ内容 : 村田漢方堂薬局 様 初めまして。
 藁をも掴む気持ちでメールさせて頂きます。
 小さい頃から虚弱体質・低血圧で、心も不安定になりやすく20〜25才まで●●市内で仕事をしていた時は特に大変でした。
 その後、結婚退職して専業主婦となり少し落ち着いていたのですが、●●生まれ●●育ちの私が、主人の転勤で◎◎県へ引っ越しました。
 ◎◎では、自分の体質に自信が持てずにずっと迷っていた出産を決意し娘を授かりました。けれど、予感的中で、出産も重く産後の回復も悪く、その中で育児と重なって次第に心と身体のバランスを崩していきました。

 娘が5才になった頃、5ヶ月程漢方薬を飲んでいたのですが、顔の肌荒れは改善しましたが体調に関しては回復が見られず経済的にも負担になりやめてしまいました。
 その後5年間、ひどいめまい・頭痛・肩こり・冷え性・不眠・過眠・食欲不振・便秘など。時にはストレスが引き金となり下痢になり、ひどい時には「胃腸炎」で入院してしまいました。

 心の方もイライラ・死にたい気持ち・うつ状態とひどくなる一方で、このままだとどうなるのだろうと思っていたところ、主人の転勤が決まり、主人が即私の故郷である●●に住む場所を決めてくれたのです。
 これで回復できると信じていたのですが、同じアパートの人たちとのトラブル・娘の心配事・その他色々重なってしまい全く身体の状態がよくならなかったのです。
 その間、内科・耳鼻科(めまいの検査)・婦人科・皮膚科で検査を受けても全く異常が見られず、最終的に1年前から心療内科へ通院しております。そのときの診断は「抑うつ神経症」とのことで、ソラナックスとドグマチールを服用し続けました。

 1年間程服用したドグマチールを段階的に減らして、服用を止めた後、また状態が悪くなり、仕事を少し始めたり子供関係でお役をすることがあったりで、ストレスがかかり「パニック障害」「社会不安障害」との診断を受けました。
 体力はどんどん落ちていき、心は壊れる一方で、薬をまた替えられることで不安は増します(ドグマチールからパキシルへ)。
 最近は、動悸と息苦しさもあります。言葉にならない苦しみです。 命にかかわる事ではないのかも知れませんが、家族に申し訳ない気持ちと仕事や役員で力不足を感じ、とにかくずっと抱えてきたこの私の身体を根本的に改善したいと願うようになりました。
 自分なりに勉強して漢方がやはり私の体質改善には良いのではないかと思うのです。

 現在処方されている薬と漢方の併用が可能なのかどうかも悩んでいます。
 メールで大変失礼かと思いますが、先生のご意見をお聞かせください。どうぞよろしくお願いいたします。

※◎◎では「〇〇〇〇」にて漢方を処方していただいておりました。漢方の名前は覚えていませんが、10種類程の薬草がブレンドされており自宅にて煮出して服用しておりました。価格は2万円/月ほどでした。


ヒゲジジイのお返事メール:拝復
 貴女のような虚弱性体質の人はとても多いのです。当方で長い付き合いの常連さんの中には病院の薬漬けの泥沼状態から長年かかって抜け出した人もおられます。

 そこまでではなくとも、根気良く長期的な体質完全に数年かかってようやく8割寛解に漕ぎ着け、その後もずっと予防兼治療で漢方薬を常用されている40代女性も多いのです。
 貴方の諸症状から考えても当方の漢方で頑張るには、ご本人様の不屈の精神があるかないか、石の上にも三年の根性があるかないかの問題です。

 また大事な経費的な問題にしても、当方では多くは漢方製剤(エキス顆粒や錠剤)を中心に、かなりきめ細かく繊細な配合を行います。煎じ薬では却って臨機応変の微調整が行いにくく、また煎じ薬を調合する時間が惜しくもあり、服用者に各種製剤を微妙に組み合わる方法を伝授する方法が主体です。

 ですから、服用者も主観的および客観的な報告をする必要があります。経費的な面では、各種製剤をできるだけ安価に提供することを心がけていますが、どうしても一つの方剤だけでは不可能なことが多く、数種類以上を必要とすることが通常です。

 あなたが関東で服用されていた当時の経費と同等か、それ以上かかることも珍しくありません。

 病院から出されている薬との併用は通常まったく問題ないのですが、それとは別の問題として、やや問題の多いパキシルについては、これを服用される前に漢方で寛解できればと思います。もしも既に服用されている場合は、勝手に中止する訳には行きませんので、重大な副作用が出ていない限りは主治医の指示に従うべきです。

 要するに当方の漢方薬は、ご相談者のやる気次第なのです。
 一般論として、当方では中途半端な気持ちや及び腰のご相談者には、申し訳ないことながら、きっぱりとお断りしているのが実情です。
 当方の漢方に賭ける情熱のない中途半端な気持ちで来られた場合、中古品になりつつある我が頭脳がまったく作動しなくなるからです。
 以上、取り急ぎお返事まで。
                   頓首

折り返し頂いたメール:早々の返事をありがとうございました。

 先生のホームページやメールのお返事から、漢方治療には不屈の精神と本人の強い意志が必要な事が良くわかります。

 先生にお会いする時は、しっかりと覚悟を決めてお伺いしようと思います。

 多分、私の場合、先生も「石の上にも3年」と書かれているように時間がかかると思うのです。

 経済的な事も含め、考えざるを得ない事も多いようです。主人とももう一度話し合い、それから決心します。

 大変ご多忙中のところ、相談に回答を頂き、本当にありがとうございました。

 お礼が遅くなり申し訳ございませんでした。


【編集後記】 今月は関東を含めた東日本方面からの来訪者がとても多かった。昨日も開局早々から予告ナシに突然、関東方面から来られた方は、ヒゲジジイによる漢方薬方剤口訣ブログ中の 麻子仁丸(ましにんがん) を参考にして、合成医薬品の副作用による重度の便秘症がスムーズに解決できたことに感激され、数十年にわたる悩みである某疾患を解決するための漢方薬を求めて来局された。
 このように本気の人達は、予告ナシに遠方からでも直接やって来られるが、それだけに気合が入っているように思われる。

2007年06月25日

いびきがひどくて就寝中に咽がつまりむせる場合の漢方薬

性別 : 男性
年齢 : 30歳〜39歳
簡単なご住所 : 関西地方
具体的な御職業 : 鍼灸師
お問い合わせ内容 : いつもお世話になっております。おかげでアトピー患者が治ってきて嬉しい限りです。
 さっそくですが質問させてもらいます。
患者:30歳女性症状:いびきがひどくて就寝中に咽がつまりむせる。
 舌診:紅舌
 腹診:心下痞硬、臍下が堅い(本人いわく子宮膿腫)

 いびきがひどくて咽がつまって夜中に起きるのは心下痞硬が関係しているのではないかと思いましたがどうなのでしょうか。
 咽がつまるというので半夏厚朴湯あたりと思いましたが、いびきがどうなのかがまだ浅はかなのでわかりません。
 いびきは漢方で治すことができるのでしょうか?ご指導よろしくお願いします。

お返事メール:同様な症例を古方派時代に経験しています。
 舌に黄苔がうっすらでもかかっているようでしたら、大柴胡湯証ということが充分に考えられます。心下痞硬は半夏瀉心湯が専売特許という訳ではありません。
 胸脇苦満等、大柴胡湯証の可能性を探って見られては如何でしょうか?


折り返し頂いたメール:早速のお返事ありがとうございます!
 舌にうっすら黄色がありました。
 慌てて子宮膿腫と書きましたが左の卵巣膿腫でした。
 患者は近々 結婚するのでいびきを気にしてます。喜ぶと思います。ありがとうございました。


ヒゲジジイのお返事メール: 大柴胡湯証に間違いないようでしたら、桔梗石膏を加えると効果的です。
 実際に30年前の経験例として拙著「求道と創造の漢方」(東明社)の118頁に次のように報告しています。
   38 いびきに大柴胡湯加桔梗石膏エキス散

 二十歳前後の結婚前の女性。
 主訴はいびきで、小さい頃から鼻が悪いのか未だに治らないと言う。しかし、学校の検診で、これまでに鼻が悪いといわれたこともなく、アデノイドをやった覚えもない。付き添って来た母親は結婚をひかえて、何とか治るものなら治してやって欲しいと切実な願いである。
 体格は肥満して身が引きしまっている。肉食が大好きで、そのためか顔色は褐色で左右胸脇下に抵抗があって手が入りにくい。便秘なく、その他これといった特徴も見当たらず、どの程度効力があるか不安であったが、大柴胡湯エキス散、蛇足ながら桔梗石膏エキス散を1回量として日に三回投与により、服用ごとにわずかながら効力が認められ、約六ヶ月分の服用により殆んど、いびきを忘れるに至った。
 以上のほかにも同様な男性での経験もあります。
 蛇足ながら追加報告です。
posted by ヒゲジジイ at 01:37| 山口 🌁| 漢方と漢方薬関連の御質問 | 更新情報をチェックする

2007年06月24日

鬱病?の漢方薬の御相談

性別 : 男性
年齢 : 20歳〜29歳
簡単なご住所 : 関東地方
お問い合わせ内容 : はじめまして、●●と申します。漢方薬局を探していて、村田漢方薬局さんのページにたどりつきました。
 私は、5年半程原因の良く分からない鬱状態と様々な症状で悩んでいます。現在の症状としては、・膜が張られたように頭がボーっとしていてはっきりしない(一日中)・何もやる気が起きない・気分、具合が悪い・だるさ・動悸・胃腸が悪い・楽しい・嬉しい・気持ち良い等という感情が湧かない  などです。

 西洋医学的には鬱病の範疇だと思うのですが、典型的な鬱病とは少し違うらしく精神科でも正式には診断がつかなかったです。
 そして薬を飲んでも効きませんでした。
 西洋医学では薬が効かなかったらどうしようもないです。様々な民間療法も試しましたがだめでした。

 評判の漢方医にも診てもらい、半年以上漢方薬を飲んでいましたが全く変わりませんでした。しかし、漢方は病気にバッチリ処方が合えば良く効くとききます。漢方医の腕によると思うのでもう一度試してみたいと思いました。
 少し遠いですが、近いうちに伺いたいと思っています。いくつか質問させて頂きたいです。私のような原因のよくわからない、典型的なものとは少し違う鬱病・体調不良にも対応できますでしょうか?あとそちらに伺う日の朝10時頃には着いて、夕方5時位まではいられると思うのですが時間的には十分でしょうか?よろしければお答え頂きたいです。長々と失礼しました。


ヒゲジジイのお返事メール:おっしゃる通り、漢方薬はピントがしっかり合えば合うほど、時にビックリするほど絶大な効果を発揮するかわりに、思いがけずなかなかピントが合いにくかったり、中医学的な病態分析が複雑であったり、様々な理由から直ぐすぐにはピントがあってくれない場合もあります。

 慢性的に遷延してしまった場合では、シンプルに一つの漢方処方だけで解決できるケースは少なく、かなり複雑な配合や組み合わせを必要とすることもシバシバです。
 それだけにお近くの専門家のところで、きめ細かく配合の微調整を行ってもらいつつ
、石の上にも三年というつもりで頑張りぬく根性が必要となる場合もあります。

 ご相談内容を拝見すれば、すでに半年、評判の漢方医に通われておられたということですから、そこで頑張りぬくのが最善だと考えます。
 半年でピントが合わないからと諦めるのも一つの理由ですが、半年も通ったのだから、次第に貴方の体質を把握できたり、性格上の様々細々したところまで把握してもらえるようになっているかもしれません。
 
 また、年齢的にも二十代ということも考えますと、地元近辺の通える範囲で、地道に根気良くピントが合うまで通われた方が良いように思います。
 たとえピントがしっかり合って効果がかなり出たところで、直ぐに止めると往々にして再発しますので、その後も気長い継続服用が必要になることもあり得ます。

 当方のような自費の漢方薬の場合、一つ一つの製剤は、出来る限り安価に提供しているつもりですが、数種類以上の組み合わせが必要なことはザラであり、ご報告いただいた症状の内容によっては、時に麝香や牛黄製剤というやや高額な漢方薬(もちろん医薬品)を服用してもらわざるを得ない場合もあり得ます。

 評判のよい漢方医の先生なら、半年といわずまだまだ根気良く通い詰めれば、いつかきっと治してもらえることと思います。
 以上、お返事まで。


折り返し頂いたメール: お返事ありがとうございます。
評判の漢方医の所へ通っていたと書きましたが、それは噂だけで自分としてはあまり良い先生だとは思いませんでした。
相談時間をたっぷり取ってもらえず、初回は2,30分位で次からは数分でした。
一週間ごとに通っていたのですが、毎回舌と脈を診て、少し話して、漢方薬を処方されていました。
半年通っていましたが、毎回の数分の会話で私の体質や性格を理解していたようには思えません。
その先生は中国で勉強して国際中医師になったという事で肩書きが凄いような気がしたので、通いつづけていればその内治ると信じていました。
しかし、全く変化が無く、このまま通っていても治らないだろうと思いやめました。
その漢方薬局では、処方が毎回変わっても一週間で一律1万円位でした。
村田漢方堂薬局さんのHPを見て、賭けてみたいと思ったのですが、やはり毎回通えるような所ではないと難しいでしょうか?
初回だけ村田漢方堂薬局さんでみて頂き、次からは電話やメールでの相談は無理でしょうか?


ヒゲジジイのお返事メール:拝復
 昨年秋にも同じ関東方面の方で有名な漢方医ということで「中国で勉強して国際中医師」といわれるところに通われ、同様に相談時間のあまりの短さに落胆され、とうとう下関まで2泊3日来られたました。(ネットで調べると実際には薬学部出身で日本国内での資格は同じ薬剤師で医師ではありませんでしたが・・・)
 そこでは半月分で4万円弱の経費でやはり煎じ薬の調剤で無表示医薬品でした。
(もしかして●●薬局さんではないでしょうか???)
 現在も、上記の方は最初に宣告どおり、石の上にも三年のつもりで頑張られていますが、各種の付随する病状はかなり改善しているものの、本命の主訴の一部は不変のところもありますので、常に情報交換を繰り返しながら、時々微調整を続けています。

 ところで、

> 初回だけ村田漢方堂薬局さんでみて頂き、次からは電話やメールでの相談は
> 無理でしょうか?

とありますが、まさに書かれておられる通りのことを現実に同じ関東や関西方面から来られて行っております。
メールでの頻繁な情報交換と臨機応変の微調整に付き合える方は遠方でも治りが良い傾向にあり、情報交換を面倒がる人は、せっかく遠方から来られても結局は極少数ながら脱落者も出ています。
 といっても、中には一回目でドンピシャリと合ってそのまま寛解された運の良いアトピーの人もおられれば、数回でピントが合って後は頻繁な情報交換も必要なくなった人もかなりあります。
 しかしながら、運悪く(というかこちらの腕が非力なためもあって)ピントが直ぐすぐには合いにくい人の場合は、必要に応じた頻繁な情報交換が続くことになります。当方では必要に応じて、かなり神経質な微調整を各種の漢方製剤を用いて行いますので、しばしばこんなに微妙な調整をされる薬局はみたことがないといわれます。

 実際には、遠路はるばる来られる人の情熱次第なのですが、時にピントが直ぐには合ってくれず、お互いの根気勝負になることもあります。既に東日本方面からでも一年以内に2〜3回来られた人も複数おられます。遠方でもその気になれば、不可能ではないことは確かです。

 賭けというほかはありません。あとはお互いの情報交換能力次第ということになるかもしれません。
             頓首
   村田漢方堂薬局 村田恭介拝

2007年06月22日

茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)で冷え性が治る場合があるのはなぜか?

 夏でも手足が冷える人の蕁麻疹とアトピー性皮膚炎が同居して悩んでおられる女性に、茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)によって短期間で蕁麻疹の消退とともに手足がぽかぽかと暖かくなった。
 昨日、御本人による報告である。(舌は淡紅で黄膩苔が顕著、しかも舌先は紅。)

 このような事例は決して珍しくはないが、弁証論治にもとづく適切な漢方処方であれば、茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)のような湿熱を除去する、むしろ冷やす作用ばかりの方剤によっても、かなりひどい冷え性でも急速に治癒する場合がしばしば見られる。僅か20日の服用による速効である。
 脾胃虚寒や腎陽虚衰などによる冷え性ではなく、明らかに湿熱に伴う瘀血(血流の停滞)が原因であったから清熱利湿・活血行瘀の茵蔯蒿湯が適切な方剤だった訳である。

 大黄には優れた活血化瘀作用がある。

 また先日、例の体質改善三点セットで服用その日の内から手足が温まり始めたとの報告を得たが、これなどもまったく温める作用はないかわりに血行改善作用があるから、結果として上部にばかりに集中している温かい血流が、しっかり手足に流通するようになった結果に過ぎない。
 だからこそ警告:無謀な温め療法! というサイトの趣旨を片一方の耳にだけでも入れておいて損はないだろう。

posted by ヒゲジジイ at 01:33| 山口 ☁| 大柴胡湯や茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の真実 | 更新情報をチェックする

2007年06月21日

お気軽な御相談をお断りする理由

 お気軽な御相談をお断りする・・・といっても現実には漫画チックな現実も生じるから、我ながら苦笑せざるを得ないこともある。
 もともとお電話でのお気軽なお問合せは、やや警戒した口調で応対する受付嬢(昔のお嬢さん)にしても、ヒゲジジイが応対にでても、丁重にお断りするのはお手の物だが・・・

 薬局に直接お気軽さんが来られた場合、数十分から時に一時間もかけてお断りせざるを得ないこともあるから、何をやってるのやら?!と実に時間を無駄に浪費してしまうことがあるから、イヤになる。

 面と向かってお断りするには、なるべく気分を害さないように気を使うから生じることで、ところがお気軽なお相手は暇つぶしの要領を心得たツワモノであるから、言葉巧みに質問を浴びせかけるのである。

 質問されたらどうしても真剣に答えたくなるのが性格上の欠点?なるがゆえに、そこは踏ん張って上手に逃げなければならないのだが、べったりと人に寄りかかるように遊び上手なお気軽な連中と来たら、なかなか手に負えない。

 ようやく説得してお断り願った後では疲労困憊、その日一日は、グッタリして能率の悪い一日となる。
 どうして薬局と見たらこうもお気軽な人がやって来られるのだろうと思うのだが、止むを得ない。世間様の常識では「お気軽に御相談下さい」というのが漢方薬局の十八番となっているのだから。

 それでも昨今は、昔に比べたらお気楽な御相談が激減している。それもこれもHPやブログのお陰かもしれない。本音をブチあけて書き続けた成果が漸く実ってきた感じである。
 そうして真剣・真面目な御相談だけを受け付けることによって得られる利点は何か?
 多くの場合、当方の漢方に賭けてやって来られる真剣な人ばかりの応対であるから、ご自身の病態認識をみずから中医学的に学習してもらうことができる。

 といっても、そんなに難しい学問的なことを指導するわけではなく、漢方薬のピントの微調整の段階で、漢方処方それぞれの説明を繰り返し行うことから、それぞれの漢方薬のイメージをつかんでもらい、同時にご自身の身体に対する漢方薬の反応を感じてもらいながら、次第に必要に応じた加減を許容範囲内で、ご自身でも工夫してもらえるようになるからである。

 慢性疾患でこじれまくったものでは、虚実挟雑は当然のこととして、寒熱錯雑状況にあることがシバシバであるから、デリケートな微調整を繰り返さざるを得ないケースが多いのである。
 この時に、ご相談者が真剣に受止めてこちらに協力してみずから敏感に感じるところを報告されながら、ご自身でも主観的および客観的な判断を報告できる能力があるなしによって、病気の寛解スピードがは大いに異なって来る。

 ところが、高学歴の教養人と思われる人でも、意外に上記のことにサッパリ協力してもらえないこともあるから・・・不思議である。

2007年06月19日

子供さんのアトピー性皮膚炎の御相談

性別 : 女性
年齢 : 40歳〜49歳
ご職業 : 主婦
簡単なご住所 : 中国・四国地方
お問い合わせ内容 : 初めてメールいたします。子供のアトピー性皮膚炎のことでご相談致します。
 当方の子供は現在11歳(小学6年生・女)で、産まれた時から発疹が出ていました。生後3ヶ月頃から酷い状態になり、6ヶ月頃にアトピーと診断を受て以来、今現在まで完治に至らず、です。

 漢方薬での治療を求めて、京都の●●病院にも行った事がありますが(当時大阪に居住)、当時はまだ子供が小さかったので、漢方薬が飲めずに、強酸性水と軟膏の治療のみでした。

 その後、◎◎◎◎病院の軟膏及び食事療法を経て、現在は▲▲にあります〇〇〇〇クリニックで、中医薬の治療をしています。〇〇〇〇クリニックでの治療は、1年以上が経ちますが、さほど症状に改善が見られません。
 〇〇〇〇クリニックの飲み薬は1種類のみで、どのような症状の方に対しても同じお薬です。年齢によって分量が違うだけです。軟膏は色々な種類があります。どのような症状の人にも同じお薬で、というのは、少し無理があるのではないかと思ったのですが、とりあえず1年様子をみようと思って頑張ってみました。

 しかし、残念ながら、症状は少しマシになった部分と、悪化した部分が出来たというところです。
 現在症状が出ていますのは、肘と膝の内側、首、顔に少し、です。

 貴局では、子供は断られているという事ですが、なんとかみていただけないものでしょうか。
 できましたら、時間の余裕がある夏休みにでも、一度子供を連れて行きたいと思っています。
 どうぞよろしくお願いいたします。


ヒゲ薬剤師のお返事メール:拝復
 残念ながら当方では子供さんは原則的にお断りさせて頂いております。「例外のない規則はない」という格言どおり例外はありますが、ご両親のいずれかが当方の漢方薬利用経験者に限らせて頂いております。理由は、中医学的な弁証論治の綿密さと微調整の苦労を理解頂ける親御さんでなければ、スムーズな漢方相談が行えないからです。

 たとえ成人の場合でも、身内や友人に説得されてしぶしぶ来られたような場合はすべてお断りしている状況です。
 自費の漢方薬を利用されるからには、御本人みずからの強い決意と情熱がなければ、よくいわれるお気楽やお気軽に漢方相談に来られては困るからです。

 薬局という性質上、どうしてもお気軽な相談が多いのが通例ですが、お気楽な気分で来られても、こちらが真剣に全神経を集中し、ない頭を振り絞るのに、中途半端な気持ちでお気軽に来られたのでは、トウヘンボクな小生、いっぺんで考える気力と集中力を失ってしまうからです。(お気楽に相談できるのは気心の知れた常連さんだけです。)

 話は大分逸れてしまいましたが、文面を拝見して貴女様がとても真剣であることは充分に理解できます。ただ、過去に当方の漢方を利用された方ではなく、お子様のご相談であり、しかも文面をよくよく拝見すれば、決して重症のアトピーとは思えまえん。距離的にも遠過ぎますし、10日毎に通える範囲とも思えません。

 これが成人で御本人様のアトピーであり、重症化して勤めを止めてしまったくらいの人であれば、1〜2週間ごとにやや遠方からでも通い続けている方も多いのです。それは重症だからこそ遠路はるばる通い詰める価値があるからであり、文面を拝見する限りでは、わざわざ当方に来られる程度の重症とも思えません。

 ましてや子供さんとなりますと、本音を言って昨今の若い親御さんや小さな子供さんはまったく苦手なのです。古きよき時代の日本の伝統的な礼節が守れない親御さんが多いからです。(あの成人式の馬鹿騒ぎが象徴的です。)

 そちらのお近くにも漢方専門薬局はあると思います。お近くの漢方薬局で相談されることでも充分に寛解することが出来るレベルであると拝察します。
 以上、取り急ぎお返事まで。
                   頓首
     村田漢方堂薬局 村田恭介拝


折り返し頂いたメール: 早速のお返事ありがとうございました。
 見ず知らずの者の相談に、きちんと応対していただいて感謝致します。HP上の文面はもとより、こういった対応からも、ますます信頼のおける方と見受けましたので、断られました事を非常に残念に思います。

 西洋薬と違い、漢方は特に腕の確かな方に処方していただかないと、との考えを持っていますので、まだあまりよく知らないこの地で、腕の良い漢方薬局が、近くにありますものかどうか非常に心許無いのですが、再度探してみる事に致します。

 もし、◎◎周辺で良い薬局または病院をご存知でしたら、ご教示くだされば幸いです。


お返事メール:拝復
 その点についてもお力になれませんが、やはりネットで調べるのが手っ取り早い方法だと思います。

 希望する「簡単な住所+漢方薬」で調べれば、相応しいところが見つかるかもしれません。
 お力になれず申し訳ありません。
             頓首

posted by ヒゲジジイ at 00:15| 山口 ☁| アトピー性皮膚炎や慢性湿疹など痒みを伴う皮膚病 | 更新情報をチェックする

2007年06月18日

脊髄小脳変性症の漢方薬

性別: 男性
年齢: 40歳〜49歳
簡単なご住所: 関東地方
お問い合わせ内容 : 私の妻は「脊髄小脳変性症」という難病です。
 症状は小脳の障害による運動機能の障害です。歩行困難(バランスがとれない)、ろれつが回らない、起立性低血圧、頻尿、などです。

 何か改善できそうな薬あれば教えて下さい。よろしくお願いします。


お返事メール:拝復
 脊髄小脳変性症は中医学的には多くの場合、腎虚が基礎にある病態のようです。腎虚にも様々な意味の腎虚があり、同時に五臓六腑に流通する基礎物質(気血津液)の盈虧通滞(過不足)の状況をしっかり把握して、かなり正確な漢方薬を選択し、組み合わせる必要があります。

 過去にも当方でも地元の重症の男性を扱ったことがありますが、そうとうに根気が要るものです。日本漢方では真武湯で有効だった症例が複数報告されていますが、この処方が皆に合うとは限りませんので、お近くの専門家にしっかり直接ご相談して数年以上の根気を持って通われることです。

 完全治癒は無理でも、うまくいけばかなり寛解することもあります。

 御質問のように簡単にこの処方ですと言えるほど、脊髄小脳変性症の特効薬が存在する訳ではありません。同じ脊髄小脳変性症であっても、その人その人の体質と病状に応じた正確な漢方処方を組み合わせなければなりません。

 一生涯漢方薬を続けるくらいのおつもりで、なるべくお近くの信頼出来そうな専門家に直接ご訪問されるべきです。
 メールや電話相談などで、簡単に処方が決まることは殆んどあり得ません。
 取り急ぎお返事まで。
                  頓首


折り返し頂いたメール:ご丁寧な返答ありがとうございます。
 おっしゃるように信頼できる専門家にしっかり相談したいのですが、このあたりにそのような方がいるのか調べようもありません。
 もし、お知り合いがこの辺(◎◎でも構いません)でおられたらご紹介いただけないでしょうか。
 失礼で申し訳ありません。
 宜しくお願いします。


お返事メール:拝復
 親身になって真剣に相談に乗ってもらえるところでないと、一定レベル以上の疾患の場合は熟練の要る問題でもありますし、やはりネットで調べるのが手っ取り早い方法だと思います。案内文の裏読みをしっかりされて、あとは「賭け」だと思います。
 お力になれず申し訳ありません。
              頓首

posted by ヒゲジジイ at 00:23| 山口 ☁| 脊髄小脳変性症 | 更新情報をチェックする

2007年06月16日

保守的でなくしては生まれ得ない創造性について

 昨日は保守ジジイを敬遠されるお馴染みさんのことを書いたことで、フッと思い出したのが27年前(当時30歳)に書いた日本漢方界の巨星、故大塚敬節先生の追悼文『大塚敬節先生の私淑者としての思い出という拙論の後半部分である。
 当時の月刊『和漢薬』誌に掲載されているので、いずれ、全文をどこかのサイトに転載しておきたいと思うが、本日のタイトルに関連する部分だけを抜き書きしたい。

 革新的なもの斬新的な発想や創造的な仕事を行うには保守的でなければ真の革新や創造性は生まれるはずがないという我田引水的な論調だが、一面の真理を突いているものといまだに信じるものである。
(前半部分はすべて省略)
 消滅しかけた日本の漢方を、今日ある漢方の隆盛の勢いに導いた最大の功労者の一人である大塚敬節先生を失った今、日本の漢方界は、「術としての漢方」を置き忘れることのないよう、残された先生の多くの御著作に、常々、立ち返り、日本の伝統的漢方の質の高さについての認識を新にする必要があるのではないでしょうか。

 とりわけ、先生の御高著「漢方の特質」を座右の銘として、中医学を研究するにも、漢方を科学的に研究する時にも、我々日本人の血に流れる、大地性、一文不知性、単刀直入性、具体的真実性、即生活事実性に根ざした特質を充分に認識する必要があるのではないでしょうか。

 けだし、過去の伝統の理解なくして、また、精神的に帰するところが保守的でなくしては真に創造的なものは生まれて来ない。

 革新とは、保守あっての革新であり、革新は保守的である時にこそ真の革新が生まれ、保守的なものを内在しない革新は、砂上の楼閣に等しい。

 伝統を踏んで、自分の足場をしっかり知るもののみが、新しいものを産み出し、真に創造的であり得る。


 大塚先生の漢方は、それらのことを、臨床家の実践哲学の記録としての御著作で、我々にお教えくださっていたのではないでしょうか。

(後略)
━村田恭介著「求道と創造の漢方」東明社刊の315頁
 あらゆる分野で共通して言えることだと思う。
 伝統を保守し、先人の業績を理解するとともに敬意を表することなくして地に足の着いた改革は行えないだろう。
 あらゆる分野において古典が重視されるのもこの理由からであろう。

 だからこのどうしようもなく腐り果ててしまった日本國を憎みながらも、やっぱり愛さずにはおれないのである。
 憎いのは腐り果てた現代日本社会であり、百年前以前の日本はすべて美しいのである。それは随分前に過ぎ去った過去だからこそ美しいのである。美しいところしか見ないようにするからますます美しいのである(笑)
posted by ヒゲジジイ at 21:37| 山口 ☁| 漢方薬や中医学の学習方法および懐かしい拙論 | 更新情報をチェックする

2007年06月15日

時間に余裕の無い人の漢方相談について

 もちろん上記のタイトルが初めて来られた人の話しなら、最初ッから御相談はお断りである。

 自分の身体のことなのに時間がないから早く漢方薬を売ってくれ!

という態度で来られれば、ケンモホロロに、あるいは慇懃無礼にお断りするのがオチである(笑)

 問題は、数年近く漢方薬を続けている人の場合で、これまで順調だったので最初の数回以降はすべて代理の御家族が定期的に漢方薬の補充にみえられていたが、今年ばかりは例年になくひどい黄砂のせいで、これまでの漢方薬の組み合わせでは、効果が脆くなったように思うと久しぶりに直接御本人のご相談である。

 ところが時間が僅かしかない。会社の昼休みの利用であるから無理もないとはいえ、数年も続けていると初期の真剣勝負の時代を忘れられるのも時に困ることがある。
 薬局という性質上、数年ともなればお気軽になるのも分からぬでもないが、やや高額な費用をせっかく消費しているのだから、こんな大事な節目にこそ、久しぶりの大事な微調整なのだからもっと時間に余裕をもって来て欲しいものである

 久しぶりの急な相談でしかも時間に余裕がないとなると、コチトラ一瞬の判断を即座に行わなければならない酷いストレスの為に、治っていたはずの高血圧が一瞬にして再発してしまったのであった。

 ましてや、これまでこちらに相談することなく、勝手な配合の微調整を行って破綻を来たしてしまった部分も無きにしも非ずの素人判断を続けていたことを聞けば、ますます厳重な諸注意を与えたいところだが、それにもやっぱり時間がない。

 あまりにも短い微調整のアドバイスが終わったあとも、当然のことながら今後の大事な方針など言い残したことがたくさんあるので、いつまでもイライラした気分が続くばかりの一日であった。

 実を言えば上述の人の場合は以前、ヒゲジジイの多くの点で保守的な心情がよほど癇に障ったらしく、それゆえに少しでもヒゲジジイのツラを見るのが厭わしいらしいのである(イラっ。

ラベル:配合の微調整
posted by ヒゲジジイ at 20:43| 山口 ☁| 徹底したポリシー | 更新情報をチェックする

2007年06月13日

パソコンに舐められっぱなしのナガ〜〜〜イ1日

 朝からパソコンのトラブルに悪戦苦闘。
 遠路はるばる本州の上端から来られた方の2日目を午前中に終え、午後からは常連の老夫妻。明治の日本精神を体現した怪気炎を楽しみに二ヶ月おきにやって来られる御夫妻だが、いつになくパソコンと悪戦苦闘するヒゲジジイを腫れ物に触るように、大変ソウですね〜〜と奥様。

 大のオトナが、ガキンコのようにキカイに振り回されるようになっちゃ〜〜日本人もお仕舞いですよ〜〜〜っ、と引きつった表情で忌々しそうに頭から湯気が昇っているパンチふくろダッシュ(走り出すさま)

 朝からWindows Updateの機能がイカれて、その回復にオオワラワなのだ。アップデートのサイトを開くと「Web サイトに問題が発生したため、このページを表示できません。次のオプションが、問題の解決に役立つ可能性があります。」という表示が出るので、解決策をあらゆる個所で調査しまくってもいずれもピンとはずれの案内ばかり。

 仕事を終えて夕食後になっても解決がつかない。ようやく「教えて!goo」エラー番号: 0x80245003がでてアップデートできません で解決策が得られたのは、次のような方法である。
1.スタートをクリック→マイコンピュータ右クリック→管理をクリック→サービスとアプリケーションをダブルクリック→サービスをダブルクリック→Automatic Updatesをダブルクリック→スタートアップの種類が自動である事を確認→サービスの状態を確認し、開始になっていたので停止ボタンをクリックし、OKボタンをクリック。
2.スタートをクリック→マイコンピュータをクリック→Windows XP(C:)をダブルクリック→WINDOWSをダブルクリック→SoftwareDistributionを右クリック→名前の変更をクリック→SoftwareDistribution1に名前を変更する。
 上記の解決方法を得られた人は、「マイクロソフトのサポートセンターに電話したら、解決策を教えていただけました。」ということだった。

 このサイトに解決策が書かれてなかったら、結局はサポートセンターに電話する破目になっていただろうが、こんな複雑な手続きをしなければ回復しないのだから、不気味なパソコンにいまさらながら身震いするような恐怖を覚えたのだったたらーっ(汗)フリーダイヤルモバQどんっ(衝撃)
ラベル:パソコン
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2007年06月12日

アトピー性皮膚炎の難渋例の漢方薬の続報

おたより:内科医師

 先日、アトピーの難渋例についてご助言くださいまして、ありがとうございました。
 黄連解毒湯1包+猪苓湯1包+インチンコウトウ2包の合包と補中益気丸1包+六味丸1包の合包を処方していましたが、1週間して受診なさいました。
 全身の発赤が軽減し、顔面の痛みを伴った浮腫も改善傾向にあり随分楽になりました、とおっしゃっていました。ありがとうございます。
 昨日の舌所見は歯型あり、色調はやや紅から紫で、苔はありませんでした。
 ご報告申し上げます。


ヒゲジジイのお返事メール:拝復
 成人のアトピー性皮膚炎の場合、漢方薬によって8割以上の寛解を得るまでには、多かれ少なかれ紆余曲折を経て、次第に寛解が得られるようになり、その間には様々な配合変化を繰り返さざるを得ないケースも多く経験しています。
 最初から最後まで同一方剤の配合で寛解する幸運なケースはそれほど多くはないように思っています。

 なお、アトピー性皮膚炎患者さんにしばしば付随する瘀血(オケツ)の問題につきましては、茵蔯蒿湯と六味丸の配合や、六味丸と大黄を配合するケースでは、茵蔯蒿湯中の大黄と六味丸中の牡丹皮にはそれぞれ優れた活血化瘀作用がありますので、敢えて他方剤による駆瘀血作用のある方剤を併用する必要がなかったというケースをしばしば経験しています。

 ご報告頂いた配合につきましては、類似した配合パターンの症例を当方でもシバシバ経験していますし、現在も類似した配合パターンの適応者がたくさんおられます。

 また、多量の滲出液を伴っている表衛不固に対する玉屏風散製剤(黄耆・白朮・防風)を必要とするバターンが今年はちょっと目立っています。
 蛇足ながら、ご報告まで。
                      頓首
    村田漢方堂薬局 村田恭介拝 
posted by ヒゲジジイ at 20:00| 山口 ☁| アトピー性皮膚炎や慢性湿疹など痒みを伴う皮膚病 | 更新情報をチェックする

2007年06月10日

「下関」ナンバーの車に乗って逃亡を企てる

 今年から?「下関」ナンバーがお目見えした。11年間乗り続けた日産のテラノを下取りに出して、エックストレールにかえた。

泣く子も黙る下関ナンバー!

 マンネリを打破すべく始めたブログの人気投票の僅かな期待も空しく毎日訪問される100〜200名中、投票してくれるのは5パーセントあるか無きか。イイカゲン馬鹿ばかしくもなり、年甲斐もなく幼稚な作業に現(うつつ)を抜かしたこの数年間を思い返すと汗顔の極みである。
 だから最近は昔に戻って就寝前には読書三昧で明け方まで眠らない日々が続いている。(読書と言えば漢方療法の一環として読書感想文の提出を義務?付けたアトピーさんもいたはずだが[笑]まだメールでの提出がない。)

 とっ、発作的に逃亡したくなる日が突然やって来たのだった!
秋吉
 いかにも自分で運転するみたいな顔して写っているが、実際には常に専属運転手が必要ナノダッタ・・・トホホっ
(免許があるのは薬剤師と高校・中学の理科と保健の教師の免許のみ。運転免許はナシ! 三十代になって自動車教習所に通いかけるも、指導教官のあまりのマナーの悪さに危うく張り倒しそうになって3日で通うのをヤメタ。)
posted by ヒゲジジイ at 23:01| 山口 ☀| 繊細でデリケートなヒゲジジイ | 更新情報をチェックする

2007年06月09日

歴史の浅いアトピー性皮膚炎

 アトピー性皮膚炎の実質的な歴史は意外に浅い。ヒゲジジイが子供の頃(50年前)にはほとんど聞き慣れない病名だった。
 薬大卒業後に漢方の仕事をやりだした当初(三十数年前)には、子供さんのアトピーがしばしば見られるようになっていたが、それでも成人すれば自然に治るという楽観主義が大勢を占めていた。

 そのうち次第に成人しても治らず、悪化の一途を辿るケースが見られるようになり、ステロイドの乱用こそが元凶とする、やや本末転倒した議論がマスコミを通じて垂れ流されるようになり、ステロイド恐怖症が日本全国に蔓延する時代を迎えた。

 敗戦後の日本が豊かになるにつれ、先進国病とも言われるアトピー性皮膚炎が次第に猖獗を極めだしたのはここ数十年のことなのである。
 だから、歴史の長い中医学や漢方医学といえども、弁証論治や方証相対論にもとづいて、様々な知恵と工夫が行われはじめた歴史も、同様にここ数十年のことなのである。
 その間にはアトピー人口は爆発的に増える一方で、西洋医学におけるステロイド乱用による弊害は大きな社会問題にもなったことは既に延べた通りであるが、それに並行して様々ないかがわしい治療方法なども百出して「アトピービジネス」が横行したまま現在に到っている。

 その間には西洋医学に対抗して東洋医学の立場から、漢方と漢方薬による様々な研究と実践が行われたものの一つが、ヒゲ薬剤師による
漢方薬によるアトピー性皮膚炎治療薬研究論説集
」である。

 まだまだ研究成果は発展し続けており、「脾肺病としてのアトピー性皮膚炎」の続編として「脾肺病としてのアトピー性皮膚炎」が予定されていたが、実践面ばかりに追われて、以前のように腰を据えて論文を書くような根気をなくしてしまった。
 今、このブログに書き連ねているような駄文を弄することはできても・・・

 「脾肺病としてのアトピー性皮膚炎」では、敢えて補腎剤を必要としないケースばかりを取り上げて論じているが、アトピーが長期間遷延した場合は腎に波及しているケースがほとんどであることから「脾肺病としてのアトピー性皮膚炎」を最終結論として、当然書かねばならないはずである。
 昨今の実例でも、湿熱傷陰にともなった肝腎陰虧や肺腎陰虧に対する六味丸系列の方剤の併用が必須となるケースが続出している現状である。
 
 アトピーに対する各種様々な治療方法が氾濫している現状だが、西洋医学にせよ、東洋医学にせよ、それ以外の分野の治療方法にせよ、ましてやいわゆる「アトピービジネス」と呼ばれるイカガワシイ治療法ともなれば、その歴史は極めて短いものであるという事実を十分に認識しておいたほうが良いだろう。

 最近では、40歳を越した人のアトピー性皮膚炎患者さんが随分増えており、このこと自体が決してオーバーではなく、有史以来、ほとんど初めての現象であるはずだ。
 アトピー性皮膚炎は、今後もますます中年世代の患者も増える一方であることが予測されるだけに、幸か不幸かヒゲジジイの仕事は恐らく死ぬまで減ることはないことだろう。

posted by ヒゲジジイ at 22:22| 山口 ☀| アトピー性皮膚炎や慢性湿疹など痒みを伴う皮膚病 | 更新情報をチェックする

2007年06月08日

効きもしない薬を求めてどうする?

 電話で問い合わせられる質問には、意外にというか案の定というか、愚問が多いので受付の女性薬剤師は本当にご苦労さんである。

 昨日も、ツムラ大建中湯は置いてますか?という男性からのお問合せ。
 「これまで服用した経験があるのですか?アナタに合っているとは限らないので、安易に販売することは出来ませんよ」
 という応答に対し、病院からもらっているが効かない。大建中湯の効能には自分の症状に合っているはずなのに、という返事である。

「だったらなおさら効きもしないお薬を求めても意味がないではないですか?」
 次に60番(桂枝加芍薬湯)が出たがこれも効かない、という返事である。
「でしたら、もう一度その病院でご相談されてみられたら如何ですか?」
 というところで漸く意味不明な問答も終わったのだった。

 意味不明のお問合せとは言え、これが男性だったからこれくらいで済んだが、相手が女性だったらトンデモナイ珍問答と喧嘩腰の押し問答になりかねない。
 往々にして女性の問い合わせの場合には自分の意に満たない返事であれば、ガミガミと噛み付かれるのだから、どうしようもない地に落ちた日本社会である。
 
 ともあれ結局、上記の質問も何の為の質問だったのか、効きもしない大建中湯を求めてどうしようというのか、これも意味不明だが、病院で出された医療用漢方(ツムラ漢方)が効能通りに効いてくれないからと言って、こちらに問い合わされたところでどのように返事をすれば満足されるのか?????

 毎日まいにち、電話による愚問との戦いを強いられているのが女性薬剤師の気の毒な役割なのである。


【編集後記】 現在、医療用漢方の世界では大建中湯が乱用気味であることは、漢方界ではもっぱら危惧される不安な現象として捉えられており、一部の識者の間では、第二の小柴胡湯事件を引き起こさなければよいがと大いに危惧されている。
 すなわち腹部症状とみたら安易に大建中湯の投与が推奨されており、方証相対や弁証論治を無視した民間療法的な使用方法に警鐘を鳴らす専門家(「漢方の臨床」誌2006年1月号など)もおられるのだが・・・同じような過ちを何度繰り返せば懲りるのだろうか?

posted by ヒゲジジイ at 00:41| 山口 ☀| 大建中湯の誤投与による不快反応や副作用 | 更新情報をチェックする

2007年06月06日

頭痛を中心に様々な病態が合併する女性の漢方薬

性別 : 男性
年齢 : 30歳〜39歳
簡単なご住所 : 近畿地方
具体的な御職業 : 鍼灸師
お問い合わせ内容 : こんばんは!お世話になっています。いつも助かっています。
 一度だけ機会があってある遠方の患者さんをみました。治療ができないので良い漢方藥があれば・・・と思いメールさせて頂きました。

 主訴)頭痛(左のこめかみ〜後頭部)、手足末端の皮膚の乾燥(粉が吹くほど)、尿もれ、不整脈、背骨湾曲(生まれつき)朝は職場で元気だが、昼からはしんどい
 病態)舌は 色の薄く、裂紋がありました(あとは覚えていない)顏色は悪く、唇が乾燥している。冷たいものは嫌い。皮膚が乾燥して、尿漏れもあることより肺の気虚があり、腎も弱っていると見立てました。

 漢方薬では十全大補湯あたりが良いかと思ったのですがなにぶんまだ若輩者なのでアドバイスのほどお願いします。


ヒゲジジイのお返事メール: ご報告内容には患者さんの性別および年齢などの情報が不足しています。

 おそらく女性であろうと想像しますと、真っ先に頭に浮かぶのが温経湯です。それ以外の処方はお送り頂いた情報量では浮かびませんが、あるいは提示されている十全大補湯ということもあるかもしれません。
 以上、取り急ぎお返事まで。


折り返し頂いたメール:早速のお返事ありがとうございます!
すみません!
重要な情報が抜けていました。
女性で24歳です。
小学校の教師です。
一番の主訴は頭痛です。

 腹診は臍の周り、臍の左側の動悸が強かったです。ここでかなりの脾虚ととってしまいました。
 特に心下、胃土あたりには強い邪気が見られなかったです。
 また何かあればご指導お願いいたします。
posted by ヒゲジジイ at 00:11| 山口 ☁| 更年期障害・自律神経失調症や不定愁訴症候群 | 更新情報をチェックする

2007年06月05日

アトピー性皮膚炎の難渋例の漢方薬

御質問者:内科医師

前略 アトピーの件でご教示ください。
 最近、おおくのアトピーの患者さんはそれなりに回復の方向に向かっていますが、一例は難渋しています。
 40台半ばの女性で、忙しいお仕事です。アトピー歴は長く(30年)、当然ステロイドの使用も長く、顔面には色素沈着をともなう慢性の発疹(暗赤色から紫色)があり、上肢には慢性化した発疹とかゆみにともなうビラン、背部・胸部・腹部にも同様の発疹が散在しています。

 昨年10月に受診され、さまざまな漢方薬(猪苓湯・インチンコウトウ・白虎人参湯・補中益気湯・六味丸・バクモン系など)を処方してきたのですが、一時ちょっといい感じのときが一瞬あったのみで、難渋しています。
 体格的にはやや小太り、顔面には暗赤色から紫色でやや浮腫上の発疹を認めます。ご本人は家族から顔面が悪化してむくんできた、と指摘されやや気落ちしています。
 慢性化した発疹の部分は発汗することはなく、当該部は冷感を覚え、しかし、体表には火照りを感ずるそうで、布団に入ると火照りのために不眠に悩まされているそうです。水分はそれなりにのんでいるそうですが、くらべて排尿は遠いかもとおっしゃっていました。

 なお、ステロイドも効果がないため使用はしていないそうです。最近、申し訳ないことにブシが入った八味丸を処方して全身に発赤悪化させてしまいました。
 いつも情報が少なくて恐縮ですが、ご教示いただけると幸いです。


ヒゲジジイのお返事メール: 舌象の状況が分かれば、かなりヒントになるものと思われます。舌象によって、解釈がかなり異なって来ます。

 昨今、舌象と併せて風呂上りの状況でも処方のヒントにしていますが、風呂上りに痒みが増強する場合は実熱が主体であり、風呂上りに痒みが増加しない場合は、補中益気湯証などの「陰火」が主体であることが多いようです。
 たとえば最近、後者に該当する風呂上りにはまったく痒みはなく、就寝後に痒みが酷い人で、舌先の点刺を伴った紅、舌周辺の歯型、舌質は舌先以外はすべて淡白舌というかなり矛盾した舌象のアトピーに、黄連解毒湯・補中益気丸・六味丸の併用で順調など。

 ご報告頂いた情報には、肝腎な舌象の情報が不足していますので、お送り頂いた情報による憶測だけで述べれば、ご指摘の「発疹(暗赤色から紫色)」ということから、瘀血の存在が明らかのようです。といっても、瘀血は二次的病理産物である訳ですから、駆瘀血剤を主体にすべきだと断定できる訳ではありません。
 しかしながら、もしも舌象などからも瘀血が明らかであれば、案外、桂枝茯苓丸や腸癰湯(チョウヨウトウ)などの駆瘀血剤によって意外に改善される場合も多いことと思います。便秘があり下腹部に圧迫感が強ければ大黄牡丹皮湯など。
 肝腎陰虚を伴っておれば、これらに六味丸を加えるなど。糜爛(びらん)が強ければ更に猪苓湯を加えるなど。

 これ以外の方法では、浮腫状で排尿が遠いことなどを考慮すれば、竜胆瀉肝湯を主方にすべきなのかもしれません。

 以上は、舌象の情報がなしでの憶測ですので、もしかするとピント外れの提案に過ぎないかもしれません。悪しからず御了承下さいませ。


折り返し頂いたメール: さっそくのお返事ありがとうございました。
 患者さんのお話の記憶をたどりますと、入浴するとかゆみが悪化するようでしたので、実熱がありそうです。
 そのほか、いくつか参考となる点がありましたので、次回の処方に活かしたいと思います。
posted by ヒゲジジイ at 00:27| 山口 ☁| アトピー性皮膚炎や慢性湿疹など痒みを伴う皮膚病 | 更新情報をチェックする