お便りメール:東海地方の内科医師
前略
黄砂が来てから、気道系をいためて受診なさるかたが急増していますが、幸い麦門冬系を処方してほとんどが改善されます。もちろん、五臓系のバランスを配慮して治療するようになってから打率が向上している印象です。
これも、村田薬局のホームページに遭遇してからのことですので、深く感謝しています。
本日は個人的に大変興味深く感じた患者さんについてご報告いたします。
60歳台の女性ですが、不眠を主訴にして受診なさいました。 家庭内にさまざまな事情があってのことだそうです。
心療内科にも受診してみえまして、うつ病と診断を受けたことがあるそうです。
ただ、個人的経験からほとんどの西洋薬に副作用の経験(一時は死ぬか生きるかの間をさ迷ったことがあるそうです)をお持ちで、当クリニックへ受診なさったわけです。
外見的にも大変虚弱な印象のかたで、舌は淡紅で肥大気味、脈は沈で弱とういう感じで、腹部は腹直筋緊張はあり軽く胸脇苦満を認めましたが、腹力は軟弱という所見でした。
お話のようすも元気は全くなく、ため息をつきながらのお話で、終始うつむき状態でした。
排便は数日の便秘がウサギの糞状にコロコロとでる程度だったそうです。
脾肺気虚と評価し、補中益気湯からスタートしました。
投薬後に、イライラがひどいことをお話になられましたので、ヨクカンサンカシンピハンゲを加えました。
イライラは多少改善したが、なんとなくパットしないということでサイコカリュウコツボレイトウに変更したのですが、かえって悪化してしまいました。
ごく最近の受診日に、いろいろなお話のなかから、不眠と関連して、明確な夢をみる、ということを聞きまして、カンバクタイソウトウを合方しました。
すると次の受診日(1週あと)から、すっかり様子が改善し、お元気になり、姿勢もシャンとしていましたし、語気もでてきました。
なにより、ご本人が「この数十年で経験したことがないことを体験したのです。いろいろな問題に対面しても悲観的に考えなくてすむようになり、自分でも驚いて、大変こころが平安です」とおっしゃってくださいました。
41(補中益気湯)+83(抑肝散加陳皮半夏)+72(甘麦大棗湯)が著効した患者さんです。
いわゆる漢方医学の枠だけでは到底得られなかった効果で、村田さんのご助言に従って『中医病機治法学』を読み、自分なりに中医学的な病態評価(弁証論治)をし始めて可能になった印象を持たせていただいています。あらためて深く感謝いたします。
今後も幼稚な弁証のうえでのご相談をさせていただくと思いますが、これまでと同様に寛容の精神でご助言くださいますようにお願い申し上げます。
ヒゲジジイのお返事メール:拝復
大変お見事なお手並みで、心から敬服申し上げます。
また『中医病機治法学』には無限の可能性を秘めた宝庫であり、小生自身、これまで出会った本の中では最高であると思っていますが、先生にも価値を認めて頂くと、我がことの様に嬉しく思います(笑)
ブログをはじめて1年半、HP類の世界に参入して二年半近くになりますが、そろそろ厭きアキしかかっていたところへ、中医学に目を向けられる先生に(メール交換の上だけとはいえ)出合って、お陰さまでブログの存続の励みとなっています!
大学医学部では漢方医学(日本漢方)ばかりが採用される異様な日本国内にあって、正統な中医学に目を向けられる医師の先生方の存在こそ、将来の日本漢方の改革の狼煙となることを期待している次第です。
麦門冬湯は、小生のところでも以前大いに愛用していたものが、年々使用頻度が減少しているところへ、今年になって急に気管支関連ではなく、吐き気や嘔吐恐怖症など、肺胃陰虚証というよりも胃気陰両虚証タイプの複数の人に応用する機会があり、実に不思議な年だと感じていたところです。
ご報告頂いた患者さんの
>ほとんどの西洋薬に副作用の経験(一時は死ぬか生きるかの間をさ迷ったことがある)
と言われる同様な方は、世間には想像以上に多いことと思います。(当方にもそのような方が多く集まってきています。)
ところで先日、某大学病院の二つの科から合計17種類の合成医薬品が投与されている某疾患の方が、人に紹介されて来局されましたが、さすがにその種類の多さには絶句してしまいました!
当方とて常時、頭をかかえる複雑の御相談の数々に悪戦苦闘している修業の身ですから、一緒に勉強させて頂くつもりでおりますので、今後も御遠慮なくお便り下さいます様、よろしくお願い申し上げます。
頓首
2007年04月14日
お手本となる弁証論治による治験例の御報告
posted by ヒゲジジイ at 01:45| 山口 ☀| 中医漢方薬学問答
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