2007年04月06日

巨大な子宮筋腫

御質問者:東海地方内科医師

前略 いつもお世話になっています。
 以前ご相談した子宮筋腫の件ですが、かなり大きい(8x12cm)ようでしかも結構急に大きくなっている様子です。

 ご本人はなんとか保存的に治療を試みてみたいそうです。ご教示くださいました処方を指示しようと思っていますが、バンランコンというのは全く適応はないものでしょうか。
 お教えくださいますと幸いです。


お返事メール: 子宮筋腫が大きい場合は、中医学的には桂枝茯苓丸に莪朮(ガジュツ)と三稜(サンリョウ)を加えるのが一般的です。
 さらに蒼朮やヨクイニン、田七人参などを加えて、積極的な去邪法を行うのが通常です。
 扶正も大切ですので、もしも柴胡桂枝湯証の存在が間違いなければ、小柴胡湯合桂枝茯苓丸を基本に、ガジュツ、サンリョウ、ヨクイニン、ソウジュツ、田七人参を加えなければ、可能性は低いと思います。
 もしも血虚の存在が明らかであれば当帰芍薬散や補中益気湯などを加える必要もあります。(補中益気湯は気虚に対する方剤とされていますが、現実には血虚に対する優れた方剤でもあります。)
 中医学入門当初にこれらの弁証論治によって、大きな子宮筋腫のみならず卵巣嚢腫にもしばしば偉効を奏した経験があり、当時「和漢薬」誌などに書いた記憶があります。

 なお、子宮筋腫にバンランコンを使用することはないと思います。

 以上、取り急ぎお返事まで。
                頓首
                   村田恭介拝


【編集後記】 過去に類似した症例をどこかに書いた記憶があったのでたどってみると、拙著『求道と創造の漢方』のV章「中草薬の考察━中草薬漫談━」の延胡索(えんごさく)の項、274頁に、巨大な卵巣嚢腫の例を掲載している。
 このケースでは幸い内容物が水様性であったために速効があったものの、その後数年間は同一方剤を連用して治療を徹底している。以後、大の村田漢方堂薬局の漢方ファンとなられ、
http://murata-kanpo.seesaa.net/article/25622559.html
 このページでご紹介した婦人のことである。
 その時の方剤は、同ページに記載されている方剤を転載すると、
 桂枝茯苓湯合当帰芍薬散料加香附子・延胡索・ガジュツ・三稜・猪苓であった。
 子宮筋腫の場合ではやや事情が異なり、速効は望めないかもしれないが、正確な弁証論治によってかなりな縮小をみることもある。閉経まで持ち込めた症例はかなりある。

折り返し頂いたメール:早速のお返事ありがとうございました。
”子宮筋腫のみならず卵巣嚢腫にもしばしば偉効”は大変励みになると思いますので、可能性がある旨お伝えして処方してみます。