御質問者:北陸地方の鍼灸師
前文失礼致します。風痰上擾の目眩の際はご指導ありがとうございました。
お忙しいこととは存じますがご指導いただければ幸いです。
症状なのですが、ソケイ部から恥骨一帯にかけての湿疹があり痒みがあります。
ステロイド系の塗り薬を使用していますがほとんど無効です。 患部はカサカサしています。 また、寝て起きると異様に体が寒く、特に背中が寒いです。朝起きるとお風呂 に入らないと寒くていられないです。
花粉症もあり目の痒みと鼻水が出ます。
舌所見は淡紅、白苔(膩傾向だと思います。また薄く黄色が舌中部から舌根に有るように見えます。)胖傾向です。舌辺部は逆にツルッとしてます。
甘いものの過食や食事の不摂生などあるので脾の問題が根底にあり湿熱があるのかと思うのですが、舌証との兼ねあいが今ひとつの様に思っています。
薬としては猪苓湯にプラス何か入れなければと思いますが、御助言よろしくお願いいたします。
お返事メール:ご報告された状況からは、辛温解表に風湿邪を除去する作用のある荊防敗毒散(けいぼうはいどくさん)がよいのではないかと思います。
薄くかかる黄苔は微妙で、陽虚による水湿不化による黄苔ということもありますので、湿熱を本当に挟むのかどうかは不明です。
この方剤なら、風寒湿の表症に有効ですので、花粉症や目の痒みや鼻水にも一定の効果が得られる可能性が高いと思います。
もしも手元に荊防敗毒散がないばあいは、連翹を加えてない十味敗毒湯でも代用になると思います。
一般書籍類では、十味敗毒湯の効能を去風化湿・清熱解毒として、風湿熱の皮疹に適応するとされているものがありますが、実際には清熱解毒の力よりも風寒湿を除去する作用が強いように思います。ですから意外に風寒湿を呈する湿疹に有効で、上記の荊防敗毒散の代用になりえるものだと思ってます。(但し、個人的には荊防敗毒散は優れた方剤だと思いますが、十味敗毒湯については花岡青洲の考案した方剤とはいえ、この世に存在する意義は乏しいと愚考しています。)
脾虚が明らかであれば、同じ荊防敗毒散でも人参などが加わった製剤(建林松鶴堂の製剤)「松鶴太陽」が適切だと思われます。
なお、猪苓湯を使用する必要はないように思います。
以上、簡単ながらお返事まで。
頓首
村田恭介拝
2007年03月16日
ソケイ部から恥骨一帯にかけての湿疹
posted by ヒゲジジイ at 11:21| 山口 ☁| アトピー性皮膚炎や慢性湿疹など痒みを伴う皮膚病
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苓甘姜味辛夏仁湯が頭痛や頭部ふらつきに著効を得た中医学的分析
御質問者:東海地方の内科医師
夜分に失礼いたします。一件、村田さんの解釈を伺いたいケースがあります。
30台の女性です、頭痛、頭部ふらつき、耳鳴り、めまい、むかつき感、生理の前に体調が思わしくない、など多彩な症状をもっているかたです。
基本的に、脾虚と腎陽虚があると考え、八味地黄丸・六君子湯を中軸として処方してきたのですが、最近寒いときに頭痛と頭部ふらつきが増悪され、手元にあった119を内服したそうです(花粉の頓服として処方していた)。
ほかにもいろいろ頓服を試したが全くだめで、119が著効したそうです。
私のような浅学ではちょっと理解困難ですので、村田さんのお知恵を拝借できれば幸いに存じます。
ヒゲジジイのお返事メール:119番は、苓甘姜味辛夏仁湯のことですね。
日本古方派では小青竜湯の裏の処方として珍重されており、小生も古方派時代には盛んに使用したものです。
この方剤を用いて、中年女性の喘息を根治、文字通り根治させた経験が三十年近く前にあり、確か「漢方の臨床」誌にも発表した記憶があるのですが、手元の自著を探すと見つかりません。
また、苓桂味甘湯や苓甘姜味辛夏仁黄湯など、この系列の加味方のすべての関係を「漢方の臨床」誌に発表した記憶があるのですが、いずれ書庫にいって探しておきたいと思います。
ともあれ、
>寒いときに頭痛と頭部ふらつきが増悪され
た状況に苓甘姜味辛夏仁湯によって効果が得られた仕組みは、辛温の性質の「細辛」にはかなり強力な去風止痛作用がありますので、ひとえに細辛の止痛作用のお陰であろうと推察します。また、もともと本方には吐き気や眩暈にも有効な半夏や茯苓が配合されておりますので、痰濁上擾による眩暈にも有効に作用したものと思われます。
漢方処方は一般で解説される効果効能以外の領域にも、広く応用可能なことは、猪苓湯においても既にご存知の通りです。葛根湯などについても葛根と麻黄・桂枝の配合比率次第では、各種の頚椎症など広い範囲の疾患に応用できるなど、配合中の薬味ひとつひとつの性質を深く研究されればされるほど、計り知れない応用力が付くものと思います。
と、エラッソウなことを書いた小生こそ、難問がなかなか解けずに思案し続ける御相談者が常時数名以上、毎日考え込んでは不眠症の日々を送っております(笑)
以上、取り急ぎお返事まで。
頓首
村田恭介拝
折り返し頂いたメール:早速のお返事ありがとうございました。
119のお陰で漢方処方の引出しが増えました。ありがたいことです。
夜分に失礼いたします。一件、村田さんの解釈を伺いたいケースがあります。
30台の女性です、頭痛、頭部ふらつき、耳鳴り、めまい、むかつき感、生理の前に体調が思わしくない、など多彩な症状をもっているかたです。
基本的に、脾虚と腎陽虚があると考え、八味地黄丸・六君子湯を中軸として処方してきたのですが、最近寒いときに頭痛と頭部ふらつきが増悪され、手元にあった119を内服したそうです(花粉の頓服として処方していた)。
ほかにもいろいろ頓服を試したが全くだめで、119が著効したそうです。
私のような浅学ではちょっと理解困難ですので、村田さんのお知恵を拝借できれば幸いに存じます。
ヒゲジジイのお返事メール:119番は、苓甘姜味辛夏仁湯のことですね。
日本古方派では小青竜湯の裏の処方として珍重されており、小生も古方派時代には盛んに使用したものです。
この方剤を用いて、中年女性の喘息を根治、文字通り根治させた経験が三十年近く前にあり、確か「漢方の臨床」誌にも発表した記憶があるのですが、手元の自著を探すと見つかりません。
また、苓桂味甘湯や苓甘姜味辛夏仁黄湯など、この系列の加味方のすべての関係を「漢方の臨床」誌に発表した記憶があるのですが、いずれ書庫にいって探しておきたいと思います。
ともあれ、
>寒いときに頭痛と頭部ふらつきが増悪され
た状況に苓甘姜味辛夏仁湯によって効果が得られた仕組みは、辛温の性質の「細辛」にはかなり強力な去風止痛作用がありますので、ひとえに細辛の止痛作用のお陰であろうと推察します。また、もともと本方には吐き気や眩暈にも有効な半夏や茯苓が配合されておりますので、痰濁上擾による眩暈にも有効に作用したものと思われます。
漢方処方は一般で解説される効果効能以外の領域にも、広く応用可能なことは、猪苓湯においても既にご存知の通りです。葛根湯などについても葛根と麻黄・桂枝の配合比率次第では、各種の頚椎症など広い範囲の疾患に応用できるなど、配合中の薬味ひとつひとつの性質を深く研究されればされるほど、計り知れない応用力が付くものと思います。
と、エラッソウなことを書いた小生こそ、難問がなかなか解けずに思案し続ける御相談者が常時数名以上、毎日考え込んでは不眠症の日々を送っております(笑)
以上、取り急ぎお返事まで。
頓首
村田恭介拝
折り返し頂いたメール:早速のお返事ありがとうございました。
119のお陰で漢方処方の引出しが増えました。ありがたいことです。
posted by ヒゲジジイ at 01:07| 山口 ☔| 頭痛・肩凝り・むかつきや吐き気・嘔吐・めまい・ふらつき
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