哲学の煙と牛黄製剤だけが救いの生活がどんなに長く続いていることだろう。
合間を縫ってパソコンにも向かい、仕事が終わると俯いた姿勢で本を読むかテレビでサッカーを観戦するか。
二十代半ば頃から三十代半ばまで8年間、毎晩欠かさずサンドバックと格闘してプロボクサーの夢を追い続け、それが不可能となるとチヌ釣りに熱中し・・・・本業も含めて常に猫背の生活。
右肩がひどく下がってきたのは、弱小の薬大硬式野球部でピッチャーをやっていたことに始まる。
そのうち自身がひどい頚椎症になっていることに気が付いたのは、二十年前に頭部打撲を二度やった時以来だ。
歯医者さんでの治療、あの斜め横になる姿勢が耐えられなくなった。それ以外で生じる苦痛は、考え込んだり目を凝らすパソコンなどが長時間続くと、頭がぼんやりして足元がふらつくことが起こり始めていた。
特にここ数年は老化が進んで持久力がなくなり、長時間の相談業務が極端に疲れるようになっていた。ヒゲジジイの頚椎症は残念ながらしばしば遭遇する独活葛根湯証ではない。それゆえ、対症療法的に牛黄製剤がよく効くので、麝香製剤とともに常用することでお茶を濁していた。
ところが偶然なことから、一瞬にして完治してしまったのだった!
哲学の煙の空箱のお陰である。外箱のセロファンを瞬間接着剤使用時の滑らかさをつけるために必要だからと捨てずにいたらどんどんテーブルの上に山のようになっていった。その向こう側にはテレビがあるので、次第に首を伸ばさなければ見えなくなりはじめた。
そうっ! 首を伸ばしてテレビを見るようになって以後、あらゆる頚椎症関連の諸症状が本当に超速効で雲散霧消して、以後、二週間くらいになるが、まったく再発は、ない!
信じられないが本当の話である。
そのかわりに常に、首は伸ばし加減であるから姿勢が良くなった。軍人のように威張っている。今までのように猫背で首を縮めることはない。
この猫背で首を縮める姿勢こそが最大の原因だったのだ。
以後は、次第に体力が回復し、長時間の相談業務で疲労することもふらつくことも皆無。だから、逆に穴倉生活に耐えられなくなって却って抑鬱気分が襲ってきたほどだ。
もうすぐチヌの乗っ込みである! 絶対に逃亡してやるぞっと決意している。
ところで、頚椎症にも様々なタイプがあるので、一概には論じれないが、漢方と漢方薬の世界では、葛根湯系列の症候があるばあいには意外に簡単に軽快する。
葛根湯と鋏(はさみ) で述べた独活葛根湯が適応することがかなり多い。
ところが、このタイプ以外の頚椎症ではかなり正確に弁証論治しなければならず、さいわいに独活葛根湯タイプであっても様々な方剤を組み合わせる必要が生じることが多い。
しかしながら、上記のヒゲジジイが体験した自然牽引の方法、首を伸ばす姿勢の習慣、つまり猫背に陥らない姿勢を保つ、首を亀さんみたいに縮めない。
これを実行するだけでも緩解する人が必ずやいるはずである。
信じられないことに、数十年続いた右肩のひどい傾斜が、一瞬にして治っているのだから、その効果のほどが知れようというものである。
だから最近、猫背の人や、どちらかの肩が下がっている人には頚椎症と決め込んで、盛んにヒゲジジイのタダの首伸ばし療法を伝授するのだが、真面目に取り合おうとしないのだから、みんなバカである(笑)
ラベル:頚椎症