2007年02月20日

胸、背中内部の熱感に対する漢方薬

性別 : 女性
年齢 : 30歳〜39歳
ご職業 : 医療・福祉関係



簡単なご住所 : 関東地方
具体的な御職業 : 薬剤師(漢方相談)
お問い合わせ内容 : 村田漢方堂薬局 村田恭介先生 前文失礼しますはじめまして。
 私は●●在住の漢方相談薬局に勤める薬剤師です。漢方相談歴がまだ半年でして、まだまだ使いこなせる処方も少なく、毎日が勉強の生活を送ってます。
 村田先生のHPを拝読してはいるのですが、どうしても方向性が導かれず、行き詰っている方がおりまして、助言をいただきたく、メールいたしました。
 大変お忙しいところ、申し訳ないですが、宜しくお願い申し上げます。

 八十代前半の男性 ???cm ??kg がっちりとした体格。
 主訴: 体温は平熱(36度台)なのですが、3年位前から、上半身の特に胸、背中の内部に熱感をひどく感じ、燃えるような感じがおさまらない。午後以降がひどくなり、夜は眠れない。
 皮膚表面には熱はなく、むしろ手足は冷えている。内科受診し臓器的な問題はないとのこと。睡眠導入剤は服用中。喘息体質らしいですが、今は沈静しています。
 3年前に大腸ポリープ手術。嗜好品 酒・毎日コップ1杯ほど たばこ20本少し肌は乾燥気味で、のどの渇きもありますが、水を飲みたいほどではないです。
 白内障で眼圧も高い。最近は食欲があまりない。便秘気味で便は少し固め。排尿は1日10回(夜間2回)。
 舌質・紅暗 苔・白賦。

 加味逍遥散処方にて、夜中の熱が憎悪。
 来店時、風邪を引いていて鼻水が出るというので、+黄連・桂皮・桃仁を加味。しかし、まだ熱は抑えられないので、黄連解毒湯+石膏・牡丹皮 を処方。
 さらに憎悪したらしく、今は服薬後2時間すると、熱を感じ、口が渇き冷たいものを欲するようになった。
 尿などの症状は初めと変わらず、食欲もない。こめかみあたりも痛くなってきたとのこと。
 実熱ではなく虚熱であると考えて次回は滋陰清熱の処方を考えてはいますが、どうも落とし込める処方がありません。

 なにか助言いただけたらと思います。厚かましいお願いかとは存じますが、宜しくお願い申し上げます。


ヒゲジジイのお返事メール:拝復
 読んだ瞬間に浮かぶ処方はまず、第一に小陥胸湯です。但し、この場合、白膩苔ではなく黄膩苔でなくてはなりません。もしも僅かでも苔に黄色味があれば、可能性は高いと思います。

 次に考えられるのは、釣藤散あるいは大柴胡湯、あるいは両者の合方です。
 苔の白膩に(みられる)明らかな痰湿の存在といい、眼圧が高いことといい、不眠症であり高齢であることから、釣藤散証がベースにあるようにも思われます。

 舌の紅暗は紫舌の別表現ですから、血瘀(けつお)の存在は明らかだと思われます。大黄には優れた活血化瘀作用がありますので、白膩苔に黄色味がわずかでもかかっているようなら、大柴胡湯証であることも十分に考えられます。便秘気味でもあることですし、大柴胡湯証の存在はないかを検討する余地があるかもしれません。

 また、釣藤散に地竜を加えるのも有効かもしれません。地竜には清熱熄風、鎮驚、清肺平喘、行経通絡、利水通淋など、釣藤散とはとても相性のよい薬味です。喘息体質にもマッチします。
 地竜単独でも有効かもしれませんが、白膩苔というのがちょっと気になるところです。

 以上の乱雑な書き殴りが少しでもヒントになればさいわいです。
                           頓首

村田漢方堂薬局 村田恭介拝

【編集後記】 お問合せの文面に「実熱ではなく虚熱であると考えて次回は滋陰清熱の処方を考えてはいます」とあるが、あきらかな白膩苔があり食欲もあまりない人に、滋陰清熱を行うのは疑問である。


折り返し頂いたメール:昨日は突然のメールにも関わらず、早急にお返事いただいたこと大変感激しております。ありがとうございました。

 直前の処方で実熱は少しでもおさえられると思ったのに、全く
奏効せず、それどころか憎悪したので、虚熱と判断したのは浅
はかでした。
 もう一度、先生から頂いたヒントをもとに処方検討をして、症
状が改善するよう努めたいと思っております。

 お忙しい中、本当にありがとうございました。

ラベル:熱感
posted by ヒゲジジイ at 00:40| 山口 | 中医漢方薬学問答 | 更新情報をチェックする