現在、数名、というくらいだから約三名の方に配合方剤が定まらずに、やや難航して毎晩思案している。
ところが俄かに頭の中では数学の難問を解くが如く理詰めで得られた解答が、痰熱に適応する温胆湯である。滋陰利水の猪苓湯製剤ばかりに頼らず、痰熱こそ、もっともっと配慮すべし、ということなのだ。
奇病は痰を考えよ(痰は奇病を生む)という中医学の格言にもあるように、単なる湿熱と考えるから短絡的で、痰熱のいやらしさを常々頭の中では認識しながら、適切な解答が得られなかったのは、そろそろ老化現象のせいか?!
体質と病状は微妙に異なっても、過去に経験した事例があったにも関わらず、老化現象による頭の鈍さに、我ながらイヤになってますます自己嫌悪に陥り、不眠症の日々が続くのだった。
しかしながら現実に温胆湯を使用してもらって、もしも温胆湯で無効だったらこの解答が誤答ということになるが、万一そうであったら以下の問題の配慮を行う必要がある。
注意すべきは痰熱と寒飲の弁別における常と変。たとえ疾病の本質が寒飲(寒性の痰飲)であっても体内に停留時間が長いと濃く粘稠な廃液(痰)と化し、また逆に疾病の本質が痰熱であっても体内に停留する時間が短いと粘稠な廃液(痰)とはならないからである。この場合、温胆湯と藿香正気散(カッコウショウキサン)などいずれが適応するのか、綿密な弁別が必要である。
ともあれ、異病同治の世界ですよ、中医漢方薬学は・・・・・・
痰熱の問題は温胆湯などが必要なのは常識であるが、少陽三焦に鬱滞する頑固な湿熱が通常の方剤では除去できない時にはどのような配合が必要かといえば、辛開・苦降・芳香・淡滲の配合法則を採用すべきで、たとえば茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)・猪苓湯・ヨクイニンなどに藿香正気散の少量を加えることで、頑固な湿熱の除去にしばしば成功している。
しかしながら、湿熱を除去できればすべてが解決というわけではないから、現実の様々な疾患には常に正確な弁証論治が必要なのである。
2007年01月12日
奇病は痰の存在を考えよ、ということ
posted by ヒゲジジイ at 02:52| 山口 ☀| 中医漢方薬学
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