八十五歳近い常連さんのお話。
数年前のことだが、自動車を運転するのを止められたため、昔のようには直接来局されなくなって久しい。その頃からすべて電話相談に切り替えているので、何年も直接お会いすることがなくなっている。
糖尿病、高血圧、慢性腎炎、関節リウマチなど、病気の問屋さんのようなご婦人だが、二十年以上の漢方薬のお付き合いで、一人暮らしで持病を持ちながらもなんとか御達者である。
様々な漢方薬を長年利用されているので、そのすべてを公開するのは憚られるが、浮腫みだけがうまくコントロールできずに難儀していたことがあった。
腎炎と浮腫みに対して、茵蔯五苓散加山梔子製剤に猪苓湯、六味丸系列の方剤と補助的に五苓散などを常用しても、もう一つコントロールできない。つまり利尿作用がしっかり作動してくれず、いつも浮腫みっぽい。
直接来られるように言っても、もう運転しないからと拒否されるので、そのままの配合が長く続いていた。
その後、肝炎の数値が最近不安定だというので、茵蔯蒿(インチンコウ)の成分を増強する意味で、適量の茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)を加えたところ、これが一気に効を奏して、長年の浮腫みの悩みが一気に解消して、様々の検査数値まで正常化してきた。
すでに服用している猪苓湯、五苓散、茵蔯五苓散加山梔子製剤に茵蔯蒿湯を加えたといっても、新たな生薬は大黄が増えたのみである。
事ほど左様に、ちょとした配合の工夫一つで、もう一つピントがくっきりと合ってなかったものが、ようやくドンピシャリの配合となったということなのだろう。
これまでの配合に、茵蔯蒿湯の少量を加えただけでこの通りであるから、いかに漢方薬の配合というものがデリケートで繊細なものかと、イヤになってしまうことがある。
といっても、皆がみな、このようにデリケートで繊細な配合を要するわけではないが、時にピンと合わせに難航するケースにおいてこそ、ほんのチョットした配合のずれから、期待する効果が得られてないのだろうと思われる。
実に、そのチョットした配合こそ重要課題なのであるが・・・・
2007年01月09日
頑固な浮腫に対する漢方薬配合の微妙さについて
posted by ヒゲジジイ at 01:57| 山口 ☀| 腎盂腎炎やネフローゼ、慢性腎炎および腎機能低下や腎不全
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