年の暮になると本業が慌しくなるだけでなく雑事も急に増加してブログの更新どころではなくなる。
最も多忙になるのがもちろん本業だが、成人の男女のアトピー性皮膚炎などでは例の三点セットなど主軸にして運よく数ヶ月もしない間に8割以上軽快する人も続出した本年であった。(但しステロイド長期使用例や病歴が長い場合ではそうはゆかずに根気勝負である。)
手柄話を言えば、眼球の裏に四年かかって増大したあやしい腫瘍が二回目の検査までの一ヵ月半の多種類の漢方処方併用により、検査時には完全消失して担当医を驚愕させたのはつい先日のことである。(本来ならもっと早く二回目の検査を受ける予定が、悪性と診断されるのを恐れて引き延ばして遅れたのが結果論としてはサイワイであった。しかしながら脳内に生じた腫瘍というものは、良性でアレ悪性でアレ、脳圧が亢進するので放置しておくわけには行かない。この方の場合もすでに脳圧亢進症状が出現していた。)
ところでタイトルの下痢の問題では、たまたま清熱瀉火の方剤、たとえば黄連解毒湯や辛夷清肺湯などを服用されていた関東勢の二名の方が突然下痢を発症された。しかしながらいずれの場合も未然に氷伏を防ぐ配合をしていたので、あるいはノロウイスルが原因ではなかったかと疑っている。
現在はお二人とも下痢も回復して、逆にこれがきっかけでお一人は、4ヶ月続けた何種類もの併用方剤が、僅か一方剤に絞り込めてまずまず順調である。(しかしながら、まだまだ数年以上、あるいは一生涯、この方剤が治療兼予防薬として必要な可能性もあり得る。)
またお一人は、一時、主軸の数種類の方剤以外の清熱瀉火系の方剤は中止してもらって、下痢が寒涼薬による氷伏によるものかノロウイスルが原因か不明ながら、手元にもたれていた葛根湯により下痢も治った。(氷伏の場合は、適量の葛根湯などの辛温薬によって速やかに回復することが多い。)
この方の場合は下痢の異変により、少しずつ快方に向かっていた病状が一時前戻っていたが、下痢の治癒後には氷伏に注意しながら対症療法の清熱瀉火の方剤を日毎に増減したり休薬することなどで、再びやや快方に向かいつつある。
これには毎日のように連絡してもらって、とても勘の良い方だから、舌の詳細な状態を報告してもらうことで、日々の配合変化を神経質に行うヒゲジジイのアドバイス通り忠実にやってもらえたお陰で、臨機応変の配合変化の法則をかなり把握されつつある。
つまりこの下痢という椿事がきっかけにより、より詳細な報告を毎日行ってもらえたお陰で、本命の疾患に対するピントの微調整の大事な部分が行えたということである。
前述した一方剤だけに絞り込めた希有なケースでも、最初の数ヶ月近くは毎日のようにメールでの連絡があった実績の上に、下痢という椿事によって災い転じて福となした好例なのであった。
ところで、お二人ともにノロウイルスが原因ではないかと疑って止まない理由を述べれば、お一人は近くに実際に吐き下しのノロウイスル患者さんがおられたことと、お二人ともに氷伏を防ぐ辛夷あるいは桂枝、あるいは活血薬などを配合していたのみならず、過去に寒涼薬による氷伏が生じたケースでは、全例がこれまでの順調な効果が突然途絶えて再燃気味となるというのが主な氷伏による症状であり、下痢を生じた例はなかったからである。(いくら強弁したところで、氷伏という気血の凝滞によって下痢が生じることはあり得ないことではない。)
ところで実際に氷伏が生じれば、桂枝などの適切な辛温薬を投与すれば、通常であれば比較的速やかに回復する。
蛇足ながら、地元の18年来の常連の七十歳代の女性は、突然下痢を生じたのであわやノロウイルスかと危機感を覚え、常用する板藍茶の量を増やし、藿香正気散(カッコウショウキサン)を服用して速やかに治癒したとの報告を受けたばかりである。
村田漢方堂薬局のベテラン常連さんになると、日頃の学習効果が緊急時に役に立つようだ。(この一人暮らしの方は、ノロウイルスによる吐き下し患者が出ている病院に定期的に出入りしているので、感染の可能性は高い。)
2006年12月25日
下痢の原因は清熱瀉火の漢方薬による氷伏か?あるいはノロウイルスか?
posted by ヒゲジジイ at 01:24| 山口 | 中医漢方薬学
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