2006年11月10日

漢方薬の服用時間についての御質問

性別:男性
年齢:30歳〜39歳
簡単なご住所:関東地区
具体的な御職業:漢方販売
お問い合わせ内容:
 村田先生いつもHP拝見させてもらっています。いつも先生の分かりやすい文面にて勉強させてもらっています。これからも是非頑張って続けてくれたらと思っています。
 さて今回は少し最近疑問に思うところがありまして あつかましいと思いますが先生に教えてもらおうと思い書き込み致しました。

 当店へのインターネットを通じての 患者さまからの相談をしていますとごくたまにですが 漢方薬を食後に飲むように!と指導をされてる諸先生方がいるようなのです。
 別に漢方薬がお腹にこたえているという訴えもなく 一律に食後としている先生がおられるようです。患者さんの相談にて立て続けにあったものですから 考えるものがありました。

 しかしながら今の自分の知識では いくら考えても答えが出ませんし ジオウ剤などの補陰薬系なら多少胃もたれ等の原因になるおそれがあるので食後に また食前に漢方薬を飲むと食欲不振になるなどの場合は食後に というのは分かるのですが・・・しかも六君子湯や十全大補湯などの補気薬類も食後に服用するよう指導していたといいます。自分は知識が無いために理解できません。ご指導の方よろしくお願いします。


ヒゲ薬剤師のお返事メール:拝復
 「一律に食後としている先生がおられるようです。」というのを読んだ時は、これ村田漢方堂薬局のアドバイスじゃないのっ!?と思ったほどですが、次に書かれていた「しかも六君子湯や十全大補湯などの補気薬類も食後に服用するよう指導していたといいます。」ということですから、これは村田漢方堂薬局のアドバイスではありませんでした(笑)。
 と言いますのも、当方では六君子湯のようなあまりにも穏やかな方剤は、滅多に使用しないし、十全大補湯のごときは、もう何年も販売したことがありませんので(笑)

 と、このようにヒゲジジイの服薬指導ではないかと勘違いするほど、村田漢方堂薬局では徹底して、あらゆる漢方薬を食後服用するように口うるさく指導しています。これにはかなり根拠のある複数の理由から、二十五年以上も、つまり日本古方派の時代から、この指導を徹底しています。

 まず、第一の理由、これが最大の理由だったのですが、
 古方派の時代は、煎じ薬の販売が中心で、今では殆んど使用しない八味地黄丸料を毎日毎日、当時は八味地黄丸証の人が、とても多かった事実は隔世の感がありますが、それはともかく、一部の人には、効くはずのこの八味地黄丸料が効かないという苦情があり、またその他の方剤についても方証相対間違いなし(古方派の時代ですから弁証論治ではありません)と自信がある場合でも、効かない効かないと苦情が多いのです。

 ところが苦情を言われる人達の相談カードを点検すれば、何のことはない、皆さん10日分の漢方薬を15日〜30日もかかって服用されている。まともに10日分を10日で服用してなかったという人ばかりです。
 その内実は、一部には二番煎じ三番煎じして10日分が一ヶ月分に摩り替わる好い加減な人もありましたが、多くは食間や食前の服用を忘れるために、1日に1〜2回しか服用するタイミングが掴めない人ばかりでした。
 
 こんなことなら服用を忘れにくい食後に切り替えないことには、いつまで経っても薬用量不足で効果がでないのは当然ですから、断固、食後の服用に切り替えたのでした。
 それでも服用を抜かす人は、それなりの効果しか出ないのは当然であり、それで満足されている方には、こちらもウルサクは言いません。

 効かない効かなと苦情の多い人ほど10日分が15日〜30日も延びている人ばかりだったので、効果が出ない原因をハッキリ指摘し、食後でいいから真面目に服用してもらえた人は、やはりしっかりと効果が出て来たのでした。

 このような経験から当時より、飲み忘れ防止のために漢方薬は断然食後に服用すべきと決めていましたが、そんな時、M薬業(株)さんの機関誌に関西の女医さんが漢方薬の吸収実験を科学的に行ったところ、明らかに食後のほうが吸収率がよかった というデータなどが書かれた記事を拝見したのでした。残念ながらこの記事が記載された雑誌が家のどこに保存しているか、完全に迷子になっています!
 これで、ますます意を強くし、その後も自信をもって現在に到っていると言うわけです。

 ところで、もともと中医学でも補剤は食間に服用するような記載が多かったように思うのですが、一般方剤の場合は、特別に規定があったようにも思われません。臨機応変なのではないでしょうか?
 日本ほど何とかの一つ覚えのように、漢方薬は食間や食前と決め込んで、信じて疑わないほうがどうかしている。食間や食前の方が吸収がよいという迷信も先の女医さんの実験では否定されているのですから、要するに漢方薬は胃袋に入れば、証にあった方剤を服用する限りは効果が出て当然。

 食後だって拡大解釈すれば食間でもあるわけですから、常に臨機応変で、例外的には、むしろ胃薬関係では、食前・食後・食間のいずれが御自分にとって一番効き目がよく感じるかを試してもらうこともあります。

 ともあれ、食間や食前を杓子定規に守ろうとし、そのために服用が櫛の歯のように抜けぬけになる本末転倒を戒めるべきではないでしょうか。

 以上、簡単ながらお返事まで。
                     頓首

村田漢方堂薬局 村田恭介拝


折り返し頂いたメール:貴重な時間を割きお返事下さいまして 本当に恐縮しています。ありがとうございました。

 自分も製薬会社や参考書に書かれた通りと申しましょうか 何の疑問もなく今日までほぼ一律に食前に漢方の服用を勧めていました。

 今回先生に思い切って質問して本当に良かったと思っております。
 ご丁寧ないつもながら 分かりやすい文章にて返信本当にありがとうございました。

 これからもおつき合いいただければ幸いです。
posted by ヒゲジジイ at 17:23| 山口 ☁| 中医漢方薬学問答 | 更新情報をチェックする