2006年11月08日

メタボリックシンドロームに有効な扁鵲(へんせき)を一般エキス剤で代用するには?

性別 : 男性
年齢 : 50歳〜59歳
簡単なご住所 : 東海地方
具体的な御職業 : 内科医師
お問い合わせ内容 : はじめてメールします。
 内科開業をしていますが、アトピー性皮膚炎を検索中に村田薬局のページに到達しました。
 論文を拝見し、記述を熟慮し、受診されている患者さんや患児に投薬しています。幸い、手ごたえを感じつつある状態です。村田さんには感謝していることをまずお伝えします。

 当診療所ではエキス製剤を使用しています。
 メタボリック症候群にありました”ヘンセキ”に関心がありますが、既存のエキス製剤で構成することはできないものでしょうか。
 ご教示くださいますと幸いです。 

 なお、ごく最近、中医を独学し始めたところですので、今後幼稚な質問をするかもしれませんが、粘り強くお付き合いいただきますようにお願い申し上げます。


ヒゲジジイのお返事メール:拝復
 おたよりありがとうございます。アトピー関連の拙論は、
漢方と漢方薬によるアトピー性皮膚炎研究変遷史サイトを御覧頂いたのでしょうか?
 これらの拙論はその年代毎に真剣・真面目に書いたものの、今から思えばその時代時代に即応したものだけに、常に偏りのある拙論となっていると思います。
 ただ、いずれもかなりな偏りがあるものの、一面の真理を突いているものと確信していますが、なかでも拙論の
 アトピー性皮膚炎の中医漢方薬学療法 のような清熱瀉火方剤中心の運用は、当時の時代的な環境に起因していたものと思っています。

 実際の所、昨今は当時のように黄連解毒湯を使用することは激減しています。そうなった理由は、近年、ステロイドの正しい使用方法
アトピーの漢方治療 などが広く行き渡りだしたお陰のように感じています。
 当時は、日本国中でステロイドに対する異常な恐怖心から、ステロイド軟膏の使用を拒否する人が多かった為、もっぱら清熱瀉火の黄連解毒湯が大活躍した時代だったと思います。

 ところで御質問の「扁鵲」の件、成分的には以下の通りですが、

タクシャ末 ・・・・ 0.86g
ショウキョウ末・・ 0.43g
ケイヒ末 ・・・・・ 0.43g
ボタンピ末 ・・・・ 0.43g
サイコ末 ・・・・・ 0.86g
ショウマ末 ・・・・ 0.43g
ダイオウ末 ・・・・ 0.43g
カンゾウ末 ・・・・ 0.43g
シャクヤク末 ・・・ 0.43g
チョレイ末 ・・・・ 0.86g
ハンゲ末 ・・・・・ 0.43g

既成の方剤で代用するとしたら、強いてこじつければ大柴胡湯合五苓散合腸癰湯といったところでしょうか?
 但し、こうなると経費的にも、服用上もやや難儀なものになるかもしれません(笑)
 
 このメタボリックシンドロームに関連して、出版関係の某作家氏が今月中にも当方へインタビューに来られ、氏の執筆の材料に採用されるらしいので、どのような記事になるか、ちょっと楽しみにしているところです。

 ところで中医学をはじめられたとか!そうあって欲しいもの存じます。
 我が国の漢方医学の現状のままでは民間療法に等しく、早急に中医学理論を取り入れなければ、日本の漢方の明日は無いとものと確信しています。
 小生にも愚息や愚娘を含め、身内に西洋医学の医師はたくさんいるのですが、いずれもエビデンス漢方ばかりにハシリ、中医学の本質を僅かでも知るのは回りの医師の中では意外にも一人くらいしか存在しないのが現状です。

 皆それぞれ多忙な診療の中で中医学に手を出すヒマが取れないのか、どうしても安易な漢方使いに走り、その身内が愚問を発するばかりで、昨今は質問に返事するのもイヤになってしまいます。http://kanpo.wablog.com/78.html より
 身内の医師自身のアレルギー性鼻炎と軽度の喘息傾向の治療に、もっぱら医療用漢方にこだわり、小青竜湯や葛根湯ばかりの対症療法の繰り返しで、いつまでも中医学的な弁証論治に目を向けられない人がいる。
 そもそも電話で話の序に相談される程度だからアドバイスのしようがない。
 漢方薬はお気軽に使ってお気楽に効果が出るほど安易なものではないのだが、身内で年下の医師であっても薬剤師に対するプライドが許さないのか、いつまでも傷寒・金匱の方剤、というよりもエビデンス漢方にこだわるのだから縁がないものと諦めている。
 玉屏風散に麦味腎気丸の併用など、中医学理論による配合には全く見向きもしないのだから、縁なき衆生というべきか?
 それ以前に基礎理論を理解してもらうのにも難航するのだから、当方では何度電話で質問されても、些か呆れ加減である。
 身内の医師でさえこのような現状ですから、いくら医療用漢方が盛んになってもヒゲジジイの漢方薬局が潰れずに済むのだな〜〜と変な処で感心している昨今です。

 以上、簡単ながらお返事まで。
 ブログの材料を提供して下さり、感謝申し上げる次第です。
                             頓首

村田漢方堂薬局 村田恭介拝


折り返し頂いたメール:さっそくのお返事、ありがとうございました。 お忙しいなかを貴重な時間を刈り取ってくださいましたことに感謝いたします。
今後ともよろしくお願いいたします。
posted by ヒゲジジイ at 00:13| 山口 ☀| 中医漢方薬学問答 | 更新情報をチェックする