2006年09月11日

生理前のイライラに効く漢方薬

 村田漢方堂薬局のHPを御覧になったという高校生の生理前のイライラに効く漢方薬はないだろうかという親御さんからのお問合せの電話である。
 例によって、御本人が本気で漢方を服用する意志があるのかどうか、多少遠方でも直接来られないことには確実なことは言えないので、その程度の問題なら、そちらの地元の漢方薬局で十分間に合うはずだからと、経費を気にされるようなので、このようにお伝えしてお電話を終えた。(応対は女性薬剤師)。

 実際の所、よくある女性の生理前のイライラや落ち込み等は、漢方では比較的得意分野であるから、漢方入門当初の十数年間は、それこそお気軽に相談にやって来られる多くの人に、面白いほど奏効する適切な漢方処方を販売し続けたものだ。誰もが知る「加味逍遙散」や山梔子・牡丹皮を去った「逍遙散」などが代表的で、近頃は「加味逍遙散」のほうは医療用漢方にもあるから、あえて当方まで来られる必要もない。

 漢方専門薬局でなくても置いているかもしれない。ところが、簡単なお電話だけでは簡単にアドバイス出来ないことが多いのは、典型的な加味逍遙散タイプばかりとは限らず、直接詳細に相談すれば、激しい生理痛が伴っていて内膜症・チョコレート嚢胞の問題が合併するなり、お気軽に相談できるほどの内容ではなかった場合も多々存在するから、及び腰の可能性の高いお電話での相談は皆お断りするのである。

 もしも単に、生理前のイライラがひといとか、精神的な落ち込みがひどいというレベルで、裏に隠れた問題がそれほどでもなければ、加味逍遙散や八味逍遙散あるいは四逆散などのいずれかが適切な場合が多く、経費も大したことはない。

 漢方の難しさというのは、たとえば本日実際に遭遇した例を挙げると、頭鳴・耳鳴りの重症者に釣藤散製剤と耳鳴丸の併用10日で、運よく頭鳴は完全に消失し、耳鳴りも僅かに軽快したのだが、変形性脊椎症による腰痛と膝関節炎も同時に治してほしいという追加要求されるのである。
 その理由が、当方の漢方で病院で治らなかった変形性膝関節炎を治してもらったら、同時に耳鳴りも治ったので、膝も一緒に治してもらうようにと、御紹介者にアドバイスされたというのである。

 確かに一理あることで、一人の身体で起こる病態は、予想外のところでつながりがあることが意外に多いので、常に全体を眺めながら綿密な弁証論治を行わなければ、万全とは言えないのである。

 ところが、万全にやればどうしても経費が嵩むので、耳鳴りから順番にして、それが治る都度、次は膝、次は腰という風にやって欲しいという西洋医学的な要求を出された場合は困ってしまうことも多いのである。
 一見正統に見えるこの要求は、腰痛が腎虚から来るものであれば、すでに耳鳴丸の中に入っており、膝関節炎がボウイオウギトウ証であるばあいは、湿邪の停滞と耳鳴りが連動していることは実際にあり得ることなので、順番にやるよか、バランスよくすべてを組み入れて初めてすべてが緩解することもある。
 すなわち、バラバラに西洋医学的に、これが頭鳴や耳鳴りの漢方薬、これが腰の漢方薬、これが膝の漢方薬として、順番にやっていくことではあまりうまく事が運ばず、結局はすべてがカバーできるように同時にバランスよく配合するのが唯一正解であったりするから、漢方と漢方薬の世界は奥が深く難しいものなのである。

 これらの見分けは、やはり基礎理論を含めた豊富な知識のみならず、長年の実践的な経験を積まなければなかなか分析力と判断力がつかないものである。
 あらゆる方向から、様々な可能性、すなわち五臓六腑、四肢百骸の連係情況を把握できる能力がなければ、適切な選薬をアドバイスすることは到底できない。
 だから、詳細綿密なご相談によって、理想的には10日毎に可能性の高い部分から試してもらって、より適切な配合に近づけなければならないのである。

 といっても、生理前の不調や、変形性膝関節炎、あるいは腰痛などありきたりな疾患ではその9割以上の人は、一発でピントが合ってしまうものなのである。
 ところが、他にも様々な疾患が合併してしまい、こじらせて病院治療で思わしくなく、また各地の漢方薬を試みても治らずに困って来られることが多いので、当然ピンと合わせにしばらくかかることは止むを得ないことだろう。

 ヒゲ薬剤師は自他ともに認めるイヤミジジイだから、西洋医学でも他の漢方薬の専門家でも治らなかった人達を8割緩解に導くお手伝いをして、お互いに苦労しながらも期待通りの結果が出ることにのみ、大いに快感を覚える。
 だから、どこでも同じ結論に至るであろう加味逍遙散証や、単なる膀胱炎の猪苓湯証などは、村田漢方堂薬局で相談されるまでもない。
 とは言え、一見大したことない症状でも、どこに行っても治らなかったと困惑して悩みぬき、村田漢方堂薬局のイヤミジジイのところに賭けてみようという奇特な方だけが来られれば良いと思っている。
 歳とともに次第に体力・気力が衰え、人の運命というのは分からないもので、エラッソウにこうやって嘯いているヒゲジジイ本人こそ、いつまで吠え続けていられるか分かったものではない。

 だから自分に向いた仕事、本気で賭けてくれる人、最低限のマナーを身に着けている人、クレーマーとは程遠い人、お互いに人のイタミが分かり合える人でなければ、壊れかけたコンピュータが作動してくれない。

posted by ヒゲジジイ at 21:20| 山口 ☁| 漢方と漢方薬関連の御質問 | 更新情報をチェックする

御相談に乗る気には絶対になれない事例集の御案内

 たとえば昨日も実際にあった出来事で、毎日のように受ける珍しくもない電話の受け答えだが、昨今、最低限のマナーすら忘れてしまった日本人が、あまりにも多過ぎるので、お断りの事例集ブログ
漢方と漢方薬の将来のためにを御紹介しておきたい。

 もちろん、当方の常連さんにしても、昨今、HPやブログを御覧になって遠近様々なところから来られる人達も、皆さん我が愛する奥ゆかしい「日本精神」を体現された方達ばかりである。
 (日本精神とは何ぞや? 謙譲の美徳、これなり。)
 一人ガラが悪いのは、ヒゲジジイのみ。

 と、唐突に思い出したことだが、ある日、関東と関西からそれぞれ二泊三日と一泊二日の予定で来られたお二人が、偶然同じホテルに宿泊されていたこともあった。今後もそのようなことが大いにあり得ることだろう。

 本題に戻って、
電話でのお問合せに、最低限のマナーすら守れない人々より、

 休日の日曜日にもお問合せのお電話は多いが、昨今、最低限のマナーすら守れない人がとても多い。

 「今日はお休みですが・・・」というこちらの言葉に、すかさず切り返す言葉が「お休みならお訊きしてはいけませんか!?」という不快な語調である。

 病気に困っておられる立場のご家族なら、特権的な特別な地位とでも言われるのだろうか?
 こちらとて前日までのハードな仕事でへとへとの身体を回復させている休息日である。

 実際の所、お電話でのお問合せで、先のように最低限のマナーが守れない方とは、あとあとのトラブルを警戒して、御相談を受け付けない方針を徹底している。

 これが他の人達のように「お休みのところ申し訳ありません。ちょっとお訊ねして宜しいでしょうか?」
 と言われるのであれば、頭脳が停止中のアンテナを無理に揺り起こしてでも、親身にお話を聞く位のことはマナーとしても、人情としても大いに受け入れられるものである。

 ところが、しょっぱなから切り口上でやられたのでは、不快感が先にたって、奥ゆかしさが売り物だったこの日本国も、地に落ちるだけ落ちたものだと、せっかくの日曜日も些か台無しにされた気分に陥るのである。

posted by ヒゲジジイ at 00:29| 山口 ☁| 繊細でデリケートなヒゲジジイ | 更新情報をチェックする