2006年05月22日

温熱療法の錯誤

身体を温めすぎて病を悪化させることだって多いよ!  という拙文からの引用。

 昨今、「万病の原因は冷えにある」とでも言うのか、様々な温熱療法がブームになっているようだが、このブームに乗って却って病気を悪化させた人を多々知っている。

 この問題はすでに親サイトの

漢方と漢方薬の真実:2月1日

 で述べているので屋上に屋を重ねる愚はしたくないが、中医学的な整体観の一部を極論してなるべく分かりやすく言えば、

 一人の身体で五臓六腑経絡それぞれの寒熱が異なるのだから、過度に温めすぎると、温めすぎては困る部分に弊害が出て来る可能性が高いということだ。

 言い換えれば、腎系は冷えているが、感染症などによって肺系統が熱化しているような場合、下半身が冷えているからといって過度に温めすぎると、最も過敏でデリケートな肺系統がマスマス化熱して、病状を悪化させるというようなことだ。

 冷えが身体に悪いからと言って、極端な温熱療法に走るとロクナことはない。

 だから中医学方剤、要するに漢方薬方剤は巧みな配合から成り立っており、詳細に分析すれば、ほとんどの方剤が、寒熱併用の生薬から構成されているのは上記の理由によるのだと断言しても、当たらずと言えども遠からずの解釈として十分に成り立ちうる理屈である。

 健康ブームも困ったもので、極端から極端に走り、右だと言えば皆が右に走り、今度は左だといえば、皆が熱に浮かされたように左に走ってしまう。

だから昔から「衆愚」と言われるのだ。

 と些か辛辣だが、遠来の新人さんではもっとも多い関東地区のご相談者の全員が例外なく、これまで治らなかった各医療機関や漢方薬局などで、各種の温め療法を強く奨められていた。

 だから、出されていた漢方処方も温性に偏る傾向が強く、そのために却って炎症を誘発しているケースばかりである。
 外見がひ弱に見えるからと言って、直ぐに日本漢方流の「陰証で虚証」などと分ったような分らないような些か錯誤気味の判断を下して、温補に偏る指示を下されていたということである。

 たとえば冷え症が強いと主張される女性の多くが、決して身体の芯から冷えているわけではなく、気血の運行が悪い為に結果的に末梢血管に温かい血液が流れてくれていないだけ。

 ストレスや欲求不満により肝気鬱結を呈すると、その気滞によって血の流れまで悪くなるという仕組みで、まずはストレスや欲求不満を取り除くのが先決だが、漢方処方としては四逆散(しぎゃくさん)系列の方剤を主軸に、あるいは隠し味として少量使用する必要を認めることが多いということなんですよ。

 漢方の専門家の方たちさえ、この温熱ブームに悪乗りしているとしか思えないアドバイスがあり、却って悪化させて当方に御相談に見えているケースばかりというわけです。

 昨今ブームの温熱療法とやらは、やりすぎると恐〜〜〜いことになる場合もあるんですよどんっ(衝撃)

 蛇足ながら、関東地区の人々は当方から見て、どうみても過度な薄着が目立つんですよexclamation
 真冬でも薄着のやせ我慢をすれば、末梢血管が冷え込んでも当然だが、かといって、身体の芯から冷え込んでるわけでもない。
 だから、もっと冬は厚着をすることですよexclamation×2


 薄着のやせ我慢をしながら、一方では過度な温熱療法に走るなんて、矛盾も甚だしいダッシュ(走り出すさま)ってこってすバッド(下向き矢印)

 ともあれ、人体の五臓六腑四肢百骸は複雑多変で、各臓腑経絡ごとに寒熱の違いがあり、寒熱錯雑証を呈することも珍しくはないので、漢方相談をされる方も受ける側も、かなり冷静・客観的な科学的態度を持って、慎重綿密に焦らずコツコツと、しかも臨機応変の柔軟性を忘れることなく、互いに努力する必要があるということでしょう。
 互いに切磋琢磨するといったような少々ではヘコタレナイ持久力も必要ということです。

posted by ヒゲジジイ at 01:14| 山口 | 繊細でデリケートなヒゲジジイ | 更新情報をチェックする