2006年05月15日:下関まで直接来局予定の●●さんへの追伸の続き
村田様
メールのお返事ありがとうございました。
村田様のメールを読み、あるいはホームページを読み、自分なりにいろいろ考えたりすることもあり、なかなかお返事が出来ませんでした。
十味敗毒湯は効いているのかいないのか、はっきり言ってよくわかりませんでした。
水泡のある湿疹があって、その先が白とか黄色とか化膿する可能性があるということで出されていたのだと思いますが、それを改善している気配はありませんでした。
かゆみの原因になっていたのか、痒いのは生理周期のせいなのか、或いはお天気(ここのところのぐずついたお天気)のせいなのか。
ちょうど村田様のメールをいただき、十味敗毒湯を中止したタイミングで生理になり、その生理も数ヶ月ぶりに、普通のものだったので、生理不順も加味逍遥散の影響だったのかと改めて確認した次第です。
生理がくるとぐっとアトピーの症状が楽になります。
更に、通院している病院で温清飲を飲めないと言うと、桂枝茯苓丸を処方してくれたのですが、それを飲みはじめたら、体に合っているのか、調子が良いのです。
まず小水の出がよくなり、そのせいか水泡も減ってきて、痒疹が縮んできています。
生理前はステロイドを塗っても効き目がないのですが、生理後はすっきりするのでそのせいかもしれません。
それから、漢方薬の治療は、保険が効かなければ2.3万円かかるというのは承知はしています。
以前飲んでいた薬も1日500円ほど掛かっていました。
1種類でしたので15000円程でしたが、種類が増えれば金額がかさむというのは頭ではわかっています。
ただ、毎月のこととなるとだんだん負担になってくるかもしれないとは思いました。
(中略)
・・・・・長期となると苦しくなるかもしれません。
又、エキス剤ですと、1日3回飲むのが苦しいときもあります。(肉体的に)
煎じ薬でしたら、その辺は個人に合わせて量も調整していただけるのでしょうが。
今は竜胆しゃ肝湯と桂枝茯苓丸を飲んでいます。
そんなこんなで、こちらが焦って却って村田様にご迷惑をおかけしてしまうといけませんね。
これから梅雨・夏と悪化する季節なので、不安でいっぱいなのですが、しばらくは様子を見て、夏休み頃決心しようと思います。
その節にはどうぞよろしくお願いします。
ヒゲ薬剤師のお返事メール:拝復
わざわざ下関に来られなくとも、今の調子で治るかもしれませんよ?!
というのも、
>>生理がくるとぐっとアトピーの症状が楽になります。
と書かれていますように、このような体質の方はオケツが多い体質の方ですから、桂枝茯苓丸がフィットするのでしょう!
ですから、しばらく竜胆瀉肝湯と桂枝茯苓丸で様子をみて、これでも弱ければ、もしかしたら茵チン蒿湯(インチンコウトウ)を加えるくらいのことで、もっと効果が上がるのかも知れませんよ!?
そのお医者様が漢方に熱心で、よく研究される先生でしたら、今後も治る可能性は十分にあると思います。
それには患者さんのほうも、貴女のように客観的な観察力があって正直な報告を先生にされたり、あるいは提案をされていけば、保険漢方の続行でも今後の見通しは明るいような気がしますよ!
(ただ、水分の停滞しやすい体質のアトピー患者さんに温清飲を出されのは禁忌の配合ですので、基礎的な部分でやや不安が残りますね。)
ところで、問題の自費の漢方の世界は、保険がきかない分、経費はかかるものの、自由自在な漢方が使える利点を最大限に活かせるから、病院でもうまくいかないものや、他の漢方薬局でもダメだったというのを解決できるのです。
それだけに経費的な問題は、どうしても互いに足かせになる場合があるので、決して無理はされない方が良いと思います。
現実に、ネットで遠方からやって来られた方でも、極めて順調に行きかけているのに、経費の問題で1日2回にしてしまっている人もいるわけですが、今のところさいわい順調に経過しているものの、これは運がいいほうで、多くは1日2回の服用になると、効果が不安定になるものなのです。
ほとんど目途が付いてから、予防的な段階に入って服用回数を減らすのは構わないにしても、初期からこのようでは、正直言って、こちらの方がやる気が失せてしまうのです。
だから、当方ではそのような中途半端な仕事はしたくないので、今後もますます多くの方に地元で治すようにアドバイスすることが増えるばかりでしょう。
正直言って、ネットを通じて来られる方の多くは、当方の綿密で神経質な方法は一部の人しか通用しないことを最近ようやく悟っていますから、それはそれでいいのです。
もともと当方のHPとブログ類の大目的は、我が愛する日本国のために(笑)、日本漢方に中医学理論を合体させるべきことを専門家に訴えるための方便の一つに過ぎないのですから。
頓首
2006年05月20日
5月15日の続き:アトピー性皮膚炎の方からのお返事メール
posted by ヒゲジジイ at 20:11| 山口 ☀| 漢方と漢方薬関連の御質問
|

アトピー性皮膚炎と補中益気湯
平成六年の『和漢薬』誌の新年号の巻頭随筆として依頼されて書いたものの中に、一面的な内容だった『アトピー性皮膚炎の中医漢方薬学療法』(本ブログに「2006年05月13日:壮大?な失敗作:アトピー性皮膚炎の中医漢方薬学療法」として転載しているもの)に対する補足を書いている文章が見つかった。
近年、爆発的に大流行しているこの疾患は、難治性なるがゆえにマスコミに大きく取り上げられ、日本の漢方界でも多様な治療方法が研究発表され続けていますが、漢方や中医学にとっても、決して容易な疾患ではないようです。
筆者自身も本誌四六一号に『アトピー性皮膚炎の中医漢方薬学療法』と題して、黄連解毒湯と滑石茯苓湯(猪苓湯)や六味丸・三物黄芩湯などの合方に、食餌療法の一環としてウチダのイオン化カルシウム併用による方法を発表させて頂いたところ、各地の先生方から好評を得ることができました。
ところが、最近は拙論で発表した方剤の組み合わせの範囲内では、十分に解決できないケースが出現しており、新たに補中益気湯や五苓散・辛夷清肺湯などが、配合方剤の一環として重要な位置を占めるようになっています。
とりわけ、脾や肺の気虚を無視できない病態が増えており、数年前までの「黄連解毒湯+滑石茯苓湯や六味丸」が主体であったのに加えて、「黄連解毒湯+補中益気湯+滑石茯苓湯」のパターンが増加しています。
前記拙論の発表当時は、補中益気湯類などの脾虚に対する方剤に関心をよせつつも、アトピー性皮膚炎に使用する必然性を認めることができなかったのですが、ここ二年間に爆発的に使用機会が増え続け、これによって当時と同レベルの有効率を、何とか維持しているのが現状です。
したがって、前記の拙論は一部修正・補足する必要が生じているものの、補中益気湯類がアトピーに応用され得る理論的根拠は、すでに同拙論中に「脾虚について」と題した項目を設けて、ある程度のヒントを述べています。
このように時代と共にアトピー性皮膚炎に対する経験と考察が深まるにつれて、豊富な手法を次第に習得してゆき、昨今は来局されたアトピー性皮膚炎の皆さんだけがご存知の一大飛躍?をなしとげて、普遍性と個別性をバランスよくミックスした手法を完成しつつある時代を迎えているということです。
但し、中医学的にかなり正統派的手法であるのは、間違いなく
脾肺病としてのアトピー性皮膚炎
の拙論です!
しかしながら、昨今の方法の方が中西医結合的手法も用い、かなり普遍性のある方法を土台として一応の完成をみているわけです。
実際に現在、服用中の方だけがニンマリとうなずく方法ですよね?!
但し、保険は一切きかない漢方専門薬局の医薬品が主体ですから、ほどほどの経費はかかります。
アトピー性皮膚炎と補中益気湯
近年、爆発的に大流行しているこの疾患は、難治性なるがゆえにマスコミに大きく取り上げられ、日本の漢方界でも多様な治療方法が研究発表され続けていますが、漢方や中医学にとっても、決して容易な疾患ではないようです。
筆者自身も本誌四六一号に『アトピー性皮膚炎の中医漢方薬学療法』と題して、黄連解毒湯と滑石茯苓湯(猪苓湯)や六味丸・三物黄芩湯などの合方に、食餌療法の一環としてウチダのイオン化カルシウム併用による方法を発表させて頂いたところ、各地の先生方から好評を得ることができました。
ところが、最近は拙論で発表した方剤の組み合わせの範囲内では、十分に解決できないケースが出現しており、新たに補中益気湯や五苓散・辛夷清肺湯などが、配合方剤の一環として重要な位置を占めるようになっています。
とりわけ、脾や肺の気虚を無視できない病態が増えており、数年前までの「黄連解毒湯+滑石茯苓湯や六味丸」が主体であったのに加えて、「黄連解毒湯+補中益気湯+滑石茯苓湯」のパターンが増加しています。
前記拙論の発表当時は、補中益気湯類などの脾虚に対する方剤に関心をよせつつも、アトピー性皮膚炎に使用する必然性を認めることができなかったのですが、ここ二年間に爆発的に使用機会が増え続け、これによって当時と同レベルの有効率を、何とか維持しているのが現状です。
したがって、前記の拙論は一部修正・補足する必要が生じているものの、補中益気湯類がアトピーに応用され得る理論的根拠は、すでに同拙論中に「脾虚について」と題した項目を設けて、ある程度のヒントを述べています。
このように時代と共にアトピー性皮膚炎に対する経験と考察が深まるにつれて、豊富な手法を次第に習得してゆき、昨今は来局されたアトピー性皮膚炎の皆さんだけがご存知の一大飛躍?をなしとげて、普遍性と個別性をバランスよくミックスした手法を完成しつつある時代を迎えているということです。
但し、中医学的にかなり正統派的手法であるのは、間違いなく
脾肺病としてのアトピー性皮膚炎
の拙論です!
しかしながら、昨今の方法の方が中西医結合的手法も用い、かなり普遍性のある方法を土台として一応の完成をみているわけです。
実際に現在、服用中の方だけがニンマリとうなずく方法ですよね?!
但し、保険は一切きかない漢方専門薬局の医薬品が主体ですから、ほどほどの経費はかかります。
posted by ヒゲジジイ at 02:34| 山口 ☁| 漢方薬や中医学の学習方法および懐かしい拙論
|
