2005年11月05日

昨日の江戸期の梅毒治療御質問の学生さんよりお礼のメール

学生さんのメール:丁寧なご返答ありがとうございます。
 まず、質問内容だけを送信いたしましたこと、並びに、村田さんの意に反して所属を述べませんでしたこと、お詫びいたします。(ただ、所属を述べなかったのは、単に時勢柄です。ご了承ください。)

 また、梅毒について「しっかり調べてみたか」と問われましても、答えに窮するばかりです。すみません。
殊に東方医学・薬学方面の梅毒治療については、調べ方が悪いのではありますが、日本における近代西洋医学・薬学の発展を述べる前座として語られていることや、おそらくかなり入門的な江戸時代の医学に関する本に書かれているレベルでしか知りません。

 私は文学部の学生で、日本近代文学を研究しています。
 つまるところ、現在、明治・大正期の文学における医学・薬学の影響を考えていて、その手始めに、梅毒にあたっている、ということです。そして、私のような医学に暗い者が梅毒を調べようとしたとき、真っ先に触れるのもまた西洋医学・薬学の方面からの梅毒治療でした。(図書館の検索に「梅毒」と入れても、出てくるのは皆西洋医学・薬学の本ばかりでした。)
 ご存知かもしれませんが、近代の文学作品には、西洋医学・薬学と東方医学・薬学の混在は露骨に書かれています。近代以降に流入・開発されてきた西洋医学・薬学の影響は計り知れないものですし、その影響が文学にも見られる、ということではあると思います。ただ、これまでの文学研究では西洋医学・薬学の影響ばかり取り上げ、民間治療や東方医学・薬学からの変遷という道筋を、意識していないようです。
 たとえばある作品の中で、何某かの治療を施された登場人物が、後に神経症的症状を呈するような場合、文学研究の人たちは、「発狂」の一語で簡単に片付けてしまいます。現実的にそのような患者がいたとしても、何某かの治療による副作用としての神経症的症状と考えるよりも、手を尽くした挙句の発狂として捉えていたのだろうとは、思います。しかし、実際には治療の副作用があるかもしれません。今は、文学作品が書かれた当時に比して、病気そのものはもちろん、副作用や治療効果に関する研究も進んでいますから、作品内に書かれた「病」の有り様を、本当に病だったのか、という視点に立って読み直すことができると思っています。

 「医学史の領域でもあるので、医学部や薬学部の図書館などで調べると能率的」とのご助言、確かにそのとおりと思いました。大学に入って、いい加減半年を過ぎたのに、まだどこに何があるのかもよくわからない状態で、そこまで考えが及びませんでした。伺ってみたいと思います。もちろん教えていただいた「日本古方派」「吉益東洞」に関して調べることとが先行ですが。

 聞き方すら覚束ない質問状にもかかわらず、親切にお答えくださって、本当にありがとうございました。

 ごきげんよう。

即座に返信したヒゲ薬剤師:多分、御質問の仕方から、文章力からも類推するに、文学部の学生さんかな?とも邪推していました。

所属その他を明らかしたところで、個人名や大学名までは、絶対に公表するものでもないし、そのレベルまでは知ってお返事したほうが、調べるヒントも効率のいいヒントが出せるからです。
むしろ、匿名でよいから、学部と大学名(これは公表しない)を知っておれば、たとえばK大学であれば、伝統のある大学だから、図書館も充実しているでしょうし、医学史家の先生もおられるでしょうし、そういう先生に直接当たれば、少なくとも文献の直接的なヒントを早くもらえるはずです。
小生も文学は大変好きなほうで、それだけに疾病関連の粗雑なくだりには、いつも苦笑を禁じえないところです。

それだけに、貴女ほどの研究熱心さがあれば、医学部や薬学部の医学史を専攻されている先生に喰らい付いて共同研究するくらいの意気込みでやられると、素晴らしい注釈が加えられることと存じます。

きっとご存知でしょうが、谷沢永一氏は、関西大学文学部の名誉教授だったと思いますが、書誌学関連の専門家でもあり、まあ〜、それはともかく、文学作品の研究において、注釈がいかに重要かを縷々述べられておられます。

もしも貴女が総合大学の学生さんであれば、是非とも医学史家の先生を見つけて、共同研究するくらいの意気込でないと、文学系等の知識だけでは、医学・薬学方面の詳細な理解と注釈は、なかなか困難なものだと思います。

薬学部出身のものでさえ、一般的な疾患の病名と、その疾患の本質を知るのに、皆さんずいぶん苦労しているのですから、文系の方だったら尚更困難を極める部分もあるのではないか、と推しはかるからです。

蛇足ならが、自分の雑然とした図書館!に行くのが面倒なかわりに、梅毒のことはほんの一部しか出ていませんが、手元に次のような2冊が転がっていましたので、

「文学に見る日本の医学史」 大星光史著  雄渾社(1997年・5,800円)

「病気日本史」中島陽一郎著 雄山閣出版(昭和57年刊・4,800円)

もしも、ご興味があありでしたら・・・・・・・・・
梅毒の詳細は無理ですが、文学部の学生さん向きの本かも、と思っただけですので、あくまで、これは付録です。
                                    不悉

追伸

手っ取り早い、いい本を思い出しました!

●中公新書「日本人の病歴」立川昭二著  昭和51年初版

この本の96ページから梅毒のことが記載され、その当時の専門書が羅列されていますので、これらの文献が最も強力な調査対象になるかもしれません。
船越敬佑著の「黴倉瑣談」など、当時の治療記録などの文献が98ページから何冊も記載。

●ちくま学芸文庫「江戸 病草紙」立川昭二著  1998年刊

こちらにも176ページから詳細な説明があり、文献としても、香川修徳の「一本堂行余医言」の第五巻「梅倉編」などの専門書がちゃんと記載されています。

その当時の文献は、小生、ほとんど復刻本で所持しているくらいですから、古い大学の医学部や薬学部なら、当然置いてあるはずと存じます。

上記の2冊、たとえ絶版になっていても、古本屋さんなどで、必ず比較的安価で入手できるはずです。

この二冊があれば、調査する強力な足がかりになれるほどの文献が記載されています。


ご参考までに。
posted by ヒゲジジイ at 18:46| 山口 ☀| 日本の漢方関連医学・薬学史問答 | 更新情報をチェックする

中医学問答(4)

A薬剤師:今晩は・・・。

先ほどメール便にて注文しておるうちの一つ、「臨床中医学入門」が手元に届きました!何かしら年がいも無く、プレゼントを待っていた子供のように、ドキドキしながら包みを開きました(*^ ^*)。

まだ、さわりの部分しか目を通してはおりませんが、想像以上にスッと中に入っていけて、「これなら私にも無事読破できるかも!!!」と、胸を撫で下ろしております!

まだまだ読み進んで行くと、壁にぶつかって行くのでしょうが・・・。(~_~)
 
ところで、現在私が読んでおります書籍は、関口善太先生の著された「やさしい中医学入門」と同じく関口先生の「東洋医学のしくみ」です。

たぶん、初心者向けの書籍で、かなり噛み砕いて説明をされていると思われます。お恥ずかしい話ですが、現段階の私はこれらの書籍よりまず、中医学のイメージを掴もうとしつつある段階です!

日常生活の中(仕事の合間)での読書時間ですが、これらもこの週末には最終ページに達しそうです。

ある程度の即席イメージは出来上がって来ておりますので、ここからはいよいよ詳細な内容に入っていく覚悟です!

お忙しいお体とは存じております。にもかかわらず、先生の優しいお言葉についつい甘えてしまい、本当に申し訳ありません・・・。

許されるお時間内でのご指導、これからも宜しくお願い致します!!!


ヒゲ薬剤師:拝復

イメージを作るには、ちょうどいい「厚さ」の本を選ばれて、適切だと存じます。

今頃はそのような便利ないい本が多くて、却って迷いやすいものですが、ちょうど手ごろな本だと思います。

あらゆる本をかき集めた時期がありますので、その本もはっきり記憶があります。確か、東洋学術出版社発行だったでしょうか?

入門編としては、とてもいい本のような印象がありました。

あせらず頑張って下さいませ。

入手されたばかりの本の、「臨床中医学入門」には、元版と同様に、張先生が、中医学を何度も挫折しかかった経緯が出ていますでしょうか?

あの偉大な先生でもそうだったんだ〜〜! 
と、却ってファイトが湧いたものでしたが・・・・・

http://blog.goo.ne.jp/m-kanpo/e/69c058a67f9d7058ca3e621e89b482ae

これ、若かりし頃、張先生と一緒に写った写真です!

あせらずに、頑張って下さい。

いつでもご遠慮なくどうぞ、

ヒント程度のアドバイスしか出来ないでしょうが、いずれにせよ、いつも繰り返し述べますように、自分なりの中医学全体に対する「イメージ」をを形成することが、何よりも大切だと存じます。

                                 頓首
posted by ヒゲジジイ at 00:36| 山口 ☀| 中医漢方薬学問答 | 更新情報をチェックする