今年になって急激に増加中なのが、滋陰降下湯である。
従来なら、風邪の後期の症状というか、治り際になって乾燥咳が止まらず、病院治療も効果なし、という時にシバシバ遭遇した麦門冬湯証が激減している。
昨年暮れ頃から、今年にかけて急増中のことだから、まだ充分に観察する必要があるが、麦門冬湯を服用してもらっても、従来のような期待するほどの効果が得られないことが、しばしば見られた。
よく観察すると、多少の肺陰虚のみならず肺熱を伴っており、麦門冬湯に配合される朝鮮人参がマイナスに働いているのは明らか。
これが涼性の西洋人参なら、まだ何とか効果を示していたと思われるが、やはり温性の朝鮮人参はまずい。
そこで、滋陰降下湯に転方すると、直ぐによくなった。
その後、春先に、自分自身もこの状態に陥り、従来の麦門冬湯が、ほとんど効果を示さない。
そこで滋陰降下湯に変えると、即治。
続いて、愚妻も同様な状態で、また同様に滋陰降下湯で即治。
もちろん、風邪が長引いてこじらせて来た人では、しばらく続ける必要があるが、どうしてこう、皆が皆、類似した証候を呈するのか?
これが時代の流れ、あらゆる環境的な条件そのほか、多くの共通性が見られる現代社会においても、その時代時代、その年毎の傾向と対策というものがあっても不思議はない。
当然といえば、当然のことだが、今後も「麦門冬湯証」の患者さんが減り続けるのか、たまたまの偶然なのか、充分な観察が必要であるが、村田漢方堂薬局では、従来この「滋陰降下湯」は、滅多に使用することが無い方剤であったことは確かである。